残業代請求には「時効」がある

「ある時間帯の出勤が必要なものであることは、労働者側が証明しなければならない」(東京法律事務所 菅俊治氏)

恒常的に定時より1時間早く来る人は相応の理由があるのが普通。タイムカードの記録があれば残業として認められる場合が多い。例えば、定時が9時の職場で8時52分に出社した場合、この8分間は通常なら「早めの電車に乗っただけ」などと否定的な結論に至る。

が、何か仕事を命じられていたり、鍵を開けたり掃除する役目を与えられたことをきちんと記録しておけば認められる可能性がある。

「フレックスは、いわば就業時間の配分を労働者にゆだねる制度。ただ、1日だけではなく、例えば1カ月なら1カ月の精算期間での所定の総労働時間を決め、それを上回った分が時間外手当として認められる」(菅氏)

朝が早い社長や上司より早く出社せざるをえない場合は?

「出るか否かは微妙。早く来ているだけだと『労働時間とはいえない』と反論される可能性が。いわば時間のタダ売りだから、個人的には出社すべきではないと思う。事実上『来い』と言われているか、社長や上司が1人だけでは仕事にならない場合は、間違いなく労働時間になる」

また、何となく申請しづらい、あるいは忙しくて記録する暇のない人でも、出社して何をしていたかを示す「証拠」があれば、残業時間と見なされることも多いという。では、その証拠に何を残せばいいのだろうか。

「突き詰めれば仕事の成果物だが、在社時間を記録しておけば、その始めと終わりまでは仕事で埋まっていたと推測できる。会社側にその都度出す残業の申請書や日報などは、控えを保管しておくことが有効だ」

そういう証拠がない場合は?

「戦い方が難しくなってくるが、その場合は、間接的に立証できるもの、例えば保存したメールを探すなど手段を尽くす。タイムカードの記録から、少なくともこの時間は在社して働いていたはず、と裁判官に推定してもらうやり方もある」(菅氏)