ホンダは、13年11月の米ロサンゼルスモーターショーで、FCVの新コンセプトカーを出展した。08年からリース販売していたFCVの「FCXクラリティ」にさらなる改良を加えたが、水素から電気を生み出す中核部品「スタック」を3分の2のサイズに縮小し、水素を発生するのに必要な触媒に使う高価な白金の使用量を大幅に減らした。15年に5人乗りセダン型を日米で発売し、16年には欧州での投入を予定している。

ホンダ 第5技術開発室 
上席研究員 守谷隆史

1995年にFCVの開発を担当して以来、約20年間この道一筋に歩んできた守谷隆史・第5技術開発室上席研究員が、FCV市場投入に至る経緯を語る。

「08年にFCVのリース販売を開始しましたが、それに至るまでに水素や高電圧の電気の漏れがないことを確認するため、数十項目にのぼるテストを実施しています。来年に発売する新型モデルは、燃料スタックを車のセンタートンネルに搭載して背の低いセダンタイプにし、前のモデルより重量も200キログラム以上軽量化、航続距離の延長をより実現できる工夫をしました」

13年7月、ホンダは燃料電池システムで米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携し、20年を目途に量産型を共同開発する予定だ。小型設計など生産技術に強みを持つホンダと、スタック部品の開発に1日の長があるGMが手を握ることで、豊富な特許を利用し合う「シナジー効果」が期待できる。実は、FCVの開発で、トヨタ自動車とGMが提携寸前までいっていながら、それが破談になったあと、ホンダとGMの提携が電撃的に発表された経緯がある。

ホンダの狙いについて守谷は、

「アメリカの力は、非常に重要だと思っています。アメリカを巻き込んで進めないと。独善的に日本だけでというわけにはいきません。オープンイノベーションの時代でもあり、そこは力の強いアメリカと組んで開発や市場開拓をやっていくところに、大きな価値が生まれると考えています」

と、日米連携に大きな期待を寄せた。