テレビ朝日株をなぜ買い取ったのか

テレビ朝日株売却。左から孫、朝日新聞社長、ルパート・マドック氏。(時事通信フォト=写真)

同じ頃、ジョイベンを解消した例がもう一つあります。96年、僕はハリウッドの映画会社20世紀FOXのオーナー(当時)のルパート・マードックさんと出会い、2社でデジタル衛星放送を設立するジョイベンをつくりました(JスカイB、現在のスカパー!)。さらに2社で、JスカイBのコンテンツ拡充のため、テレビ朝日の株を21.4%買い取りました。

しかし、これは猛反発を受けた。当のテレビ朝日はもちろん、朝日新聞からも大変な拒絶反応が起きたのです。「ついにメディアにも黒船襲来、乗っ取る気か」と。

僕としては、「パートナーを組む相手は味方」というスタンスで買収先の企業に向き合ってきたので、パートナーシップを強要するのはよくない、と即刻株を購入した価格そのままで朝日新聞に買い戻してもらいました。

おかげで騒動は沈静化しましたが、ご存じのとおり、これに似たことをやったのは堀江貴文さんと、楽天の三木谷浩史さんでした。この2人の場合、交渉が長引き混乱しましたが、ソフトバンクは拒絶反応のサインを察知した段階で1円も追加のお金を要求せず、潔く諦めて株式を売却。そのお金は、これまたインターネット事業に全部投入しました。

小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶氏が解説

小宮一慶氏

「これからはインターネットの時代だ」と将来を見通す力を持っている人は多い。孫さんはそれに加えて、自分でリスクをとって開拓しようとする精神、さらに緻密に考えて事業を組み立てる力があるのだろう。だからうまくいかなくなったとき、見直す力も持っている。

事業は始めるよりやめるほうが難しい。しかし孫さんの場合、集中すべき事業は何かを常に考えているため、始める決断もやめる決断も早い。

●正解【B】――相手が味方でないとパートナーは組めないから

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。