他人を教えることは、自分自身も学ぶこと

実は、私は英語には自信を持っていた。というのも高校時代、クラス担任教師の責任感の薄さが我慢ならず「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」で、受け持ち教科である現代国語の勉強を放棄した。だが、大学受験が問題である。そこで、英語と歴史で志望校合格に必要な点数を取ろうとがんばった。今でいう「選択と集中」で合格出来たのである。

だから、彼の“家庭教師”をすることができた。そして気づいたのが、他人に教えることによって、自分自身も学ぶということ。この経験は、ビジネスの世界でも生きている。

そんななか、68年には全共闘と機動隊が真正面から衝突して大惨事に発展した新宿騒乱があった。ノンポリだった私は野次馬として事件の現場にいたが、理解しがたい出来事だったといっていい。そのときに感じたのは「この若者たちは何のために暴れるのか?」ということだった。ベトナム反戦を叫んでいたが、電車を全面的に止め、通行客に迷惑をかけたわけだ。私自身は「こんなやり方で社会正義が勝ち取れるのか、この人たちの親御さんは、どんな気持ちだろうか」という気持ちで、事件の現場を眺めていた。

また、この時代は水俣病やイタイイタイ病など公害病訴訟も新聞紙面をにぎわせていた。それはまさに、日本の高度経済成長の歪みともいうべきもので、多くの企業が糾弾され、裁判そのものは長引いていく。私も法学部の学生として、企業の社会的責任というものを考えたことを思い出す。こうして、大学生活も2年、3年と過ぎていき、やがて就職活動が間近に迫ってくるわけである。

香藤繁常(かとう・しげや)
1947年、広島県生まれ。県立広島観音高校、中央大学法学部卒。70年シェル石油(現昭和シェル石油)入社。2001年取締役。常務、専務を経て、06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。
(岡村繁雄=構成 尾崎三朗=撮影)
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