盛り上がりを見せるブラジルW杯。各国のスター選手が集まる中で、ひときわ輝きを放つのがアルゼンチンのメッシ、ポルトガルのロナウド、ブラジルのネイマールの3人だ。『誰がどう言おうと議論の余地はない。現時点で、この3人が世界最高の選手だ』とは優勝候補ブラジル代表の監督スコラーリの言葉だ。欧州の著名ジャーナリストが本人たちも含めた有力者たちの証言をもとに、プライベートも含めて3人を徹底比較した書籍が『Who is the Best? ~メッシ、ロナウド、ネイマール。最高は誰だ?』。なぜ、この3人は別格なのか? 様々な面からその秘密を見ていこう。

メッシには、特筆すべきボールコントロールがそなわっている。ボールはいつも彼の左足にくっつけられているかのようだ。ボールのあるなしに関わらず、小さなスペースで動き回り、最小のスポットの中でも切り返すことができるので、彼がどちらの方向に進むのかを見分けるのは不可能である。

「あいつは、ボールを見なくてもコントロールできる、数少ない選手の一人だよ」。そう語るのはアルゼンチン史上有数のDFでCAリーベル・プレート、ラシン、クルゼイロECでも活躍した現解説者のロベルト・エル・マリスカル・ペルフーモだ。

「それで彼は、対戦相手とチームメイトを見る余裕ができ、誰にも予測できないパスを出せる。そんなことができるのも、彼がピッチ全体に目を配っているからだ。加えて、メッシには“肉体的思考”とでもいうものがそなわっている。常に思考と肉体が連動してフル回転しているんだ。

ペレ、マラドーナ、ディ・ステファノにそなわっていた天性が彼にもそなわっている。脳が、彼の足に対して、次にどう動くべきか素早く指令を出しているわけだ。アイディアがメッシに伝わると、一瞬にしてそれが実現しているということさ」

オランダのニーメガンにあるラドボウド大学のオランダ人医学者、ピーター・メデンドープはメッシの思考回路、決断に至るまでの過程を知ろうと彼の脳を分析した。「メッシは何分の1秒かの間に、走るのか、ジャンプするのか、シュートするのかを決断するわけだが、我々はそのとき彼の脳の中で何が起きているかを知ろうとした」とメデンドープは語る。

「何をきっかけにして彼は次の方向性を決めるのか? ピッチ上で彼は全員の位置を把握しており、瞬間的に次のディフェンダーをかわすのか、どこへ向かうのかを決めるだけではなく、どちらの足を使い、どのようにボールを扱うかまで決めているんだ」

肉体的思考とは別の要素として、ここでは物理的なスピードが大きな役割を果たしている。

メッシはトップスピードに乗ったときでさえも正確な動きをして、トップスピードでは頻繁に起こる激突がほとんどない。一気に走り出し、加速し、ドリブルをして、ターンして方向転換し、一瞬にしてアシストまたはゴールにつなげることができる。

そんな動きをしながらも周囲のアシストを探し出し、ワンツーを仕掛け、チームのためにプレーしている。今でこそ彼のチームワークは称賛に値するものだが、ここに至るまでには長い道のりがあった。学校にいた頃はもっと唯我独尊タイプで、「オレにボールをくれ、もっとプレーしたい」と自己主張ばかり強い子供だったのだ。