コンパクトカメラBiG miniのデザインを担当したコニカミノルタグループ・平賀明子。冷凍食品の雄ニチレイフーズ・武永早苗。世界市場で成長著しい村田製作所・水野健一。次世代の日本を背負ってたつ俊英が結集した。

日々の業務では決して触れることのない世界最先端の経営学講義は、先行き不透明な企業経営の解決策を見出した。時間と場所を選ばない講義、読書、討論の相乗効果は受講生の何を変えたのか。

<strong>ニチレイフーズ 営業本部特販営業部長 武永早苗</strong>●1963年、横浜市生まれ。北里大学卒。86年入社、臨床検査薬開発業務に従事。95年加工食品部門に異動。その後、開発部門を経て、2010年4月より現職。
ニチレイフーズ 営業本部特販営業部長 武永早苗●1963年、横浜市生まれ。北里大学卒。86年入社、臨床検査薬開発業務に従事。95年加工食品部門に異動。その後、開発部門を経て、2010年4月より現職。

次に紹介するのも、企業派遣組の女性である。ニチレイフーズ営業本部特販営業部長の武永早苗(47歳)だ。

「私は『エアキャンパス』でやり取りされるほかの方の議論に興味をひかれます。『え、こんなことを話題にするの?』と思わず反応してしまうような書き込みがあると嬉しくなりますね。もちろん私自身も投稿します。たとえばBOP(途上国の低所得者層)マーケットと日本の高齢者マーケットとは一見まるで違うように見えますが、両者は同じように情報弱者であり、企業からのアプローチ法には共通点もあると思います。そのことを書いて投稿したことがありますが、同調する意見は現れませんでした(笑)。でも、それでいいんです。自分とは違った見方、考え方を確認できるという点でエアキャンパスは貴重だと思いますから」

平賀と同じ17期生の武永は、逆説的な表現を使いながら大前経営塾の魅力をこう語る。

武永がいう「エアキャンパス」とは、大前経営塾の名物ともいえるネット上の掲示板。多くの塾生が講義内容やテーマに関する意見をここへ投稿し、侃々諤々のディベートを繰り返す。ここには時に大前塾長ほか講師陣も顔を出し、議論をリードしたり、意図的に挑発したりして塾生たちの成長をサポートする。

武永のいまの仕事は、全国に数千台設置されている食品の自動販売機や通販会社を通じ、ニチレイの冷凍食品を販売することである。おもしろいのが電子レンジを組み込んだ自動販売機。高速道路のサービスエリアやオフィス、学校などに設置され、チャーハンや焼きおにぎり、鶏のから揚げといった軽食を提供する。

「自販機の前では必ず、どんな方が買ってくれるのかをそっと観察するようにしています(笑)。実は娘が通っている高校にも1台設置されていて、娘や友人たちから『あれはおいしかった』『でもこれは全然だめ』といった声が届くんですよ」

ほがらかな笑顔でこう語る。一見すると営業一筋のキャリアウーマンだが、そもそもは研究開発部門で臨床検査薬の開発や冷凍食品の品質評価などを担当していた。営業部隊を率いるようになったのは、ほんの1年前のことである。

「自分の事だからわかるのですが、やはり研究出身の人間は頭でっかち(笑)。一方、営業にはロジックだけではなく現場に基づいた知恵も必要です。大前経営塾では、そういった部分の大事なヒントをもらっていると思います」

現場の経験と大前経営塾での学びを経て、早くもそうした認識に到達しているのである。(文中敬称略)

(増田安寿、熊谷武二=撮影)