初期投資が不要で、手間もかからずランニングコストも経済的――。クラウドサービスの普及で、「グループウェア」を導入する中小企業が着実に増えている。とはいえ、多様な事業者がサービスを提供しており、自社に合ったものを見つけるのは簡単ではない。そこで中小企業の担当者になりかわり、導入にあたっての疑問や不安を、グループウェアの定番「サイボウズOffice」で知られるサイボウズ(株)の栗山圭太さんに聞いてみた。そこから見えてきた、「使えるグループウェア」の見極め方とは──。
質問1
当社は社員10名程度の会社。業務の幅も広がってきたので、グループウェアの導入を検討していますが、他社では「社員同士の顔が見えるので、結局スケジュール管理や掲示板は使われてない」という話も……。しっかり活用できるグループウェアのポイントはどこにありますか?
・質問に答える人
栗山圭太●くりやま・けいた
サイボウズ株式会社
ビジネス・マーケティング本部
プロダクトマネージャー

グループウェアを単なるスケジュール管理システムや掲示板だと考えているとすれば、それは誤解です。グループウェアは、社内のコミュニケーションの基盤となるもの。まずは、そうした認識を持っていただき、その上で導入時に重視すべきは、働いている人が思わず使いたくなる仕掛けです。ここに注目するのがいいでしょう。

例えば、「業務日報がそのまま出退勤データになる」「申請や処理のプロセスが一目で分かる」など。社内にある具体的なニーズに応える、あるいは潜在的なストレスを軽減してくれるグループウェアを採用すれば、皆が自然と使うようになります。活用への推進力は、使う人たちの“小さな成功体験”の積み重ねなんです。

最近のユーザーは、スケジュール管理や掲示板のほかにも、ワークフローの見える化などにも注目しています。サイボウズOfficeの新規顧客の約4割が、社員10名以下の会社です。社員数にかかわらず、契約書管理、案件管理、プロジェクト管理などの情報共有へのニーズは強いと実感しています。
 

質問2
クラウドサービスのメリットは理解していますが、やはり「セキュリティ面」が心配です。セキュリティ対策が十分かどうか、どのようなところで判断するといいでしょうか?

すでにグループウェアの多くがクラウドサービスで提供されています。そのため、徹底したセキュリティ管理は確かに必須条件。ログ管理ができるかどうかは基本として、「データの保全」や「アクセス認証」が万全かを確認しましょう。

アクセス認証では、IDとパスワードによる認証が最低限クリアできていること。加えて、端末を限定する「IPアドレス」や「電子証明書」の認証方式に対応する仕組みになっているかどうかが見極めのポイントでしょう。また最近は、社外スタッフともグループウェアで情報共有するケースが増えています。そうなると、すべての情報をオープンにはできません。情報の公開・非公開を適切に設定できるかも要チェックです。

そしてもう一つ、セキュリティで重要なのは、実はシステムの脆弱性対策です。日々IPA(情報処理推進機構)などから出されるネットワークなどの脆弱性情報。それに即応できる体制がないと、外部侵入を許すことにつながりかねません。この辺りはユーザーに直接見えない部分ですが、クラウド運営事業者には相応の体力が求められるのです。

確認するには、サービス提供事業者にずばり、「脆弱性対策はどうしていますか?」と聞いてみるのもいいでしょう。「適切に対策しています」「前向きに取り組んでいます」といった抽象的な回答の場合は要注意です。