ナルシスト≒グローバル人材?

「社会なんて見えない」というのが、ナルシスト採用のキャッチフレーズです。これは厳密には、「社会が見えていない」ということではなく、「社会なんてまともには見ることができない」ということです。要するに、偏屈でひねくれている一方で、社会の変化や枠組みに対してものすごく敏感でもあるのだと思います。僕は、もしかするとナルシストな若者は、自分への好奇心による強固な「軸」をベースにして、社会の前提となっている様々なシステムや文化の「枠」を、常に柔軟に捉えなおそうとしているのかもしれない、とすら考えています。

これからは「グローバル人材」が必要だ、とよく言われますが、それはどのような人材のことなのでしょうか。僕は、語学力があるとか、海外事情に詳しいというようなことではないと思っています。それは、自分が生まれ育った環境において“あたりまえ”だとされてきた常識や枠組みに縛られず、多様な文化や価値観に柔軟に対応できる、ということだと思います。日本人は島国の単一民族であるためか、外国人との様々な違いを受け入れ、彼らと対等な関係をつくるのが苦手だと言われています。これが日本人のグローバリズムを遅らせている大きな理由の一つだと言えます。僕たちはもっと柔らかくであるべきです。

もちろん、ただあれやこれや柔軟に馴染んでいるだけでは、何も見いだせず、思考もできません。つまり、外側にある「枠」によりどころを求める代わりに、自分自身の中に「軸」を確立していく必要があるのだと思います。自分の好奇心と「軸」をベースに物事を捉え、様々な周辺環境への違和感や疑問と戦ってきたナルシスト人材が、あと少し「柔らかさ」を習得すれば、社会や組織との新しい関係性を開発し、真の「グローバル人材」へと進化するのではないか!? と思っているのです。まぁ、これも論理が飛躍しているかもしれませんが……。

この「ナルシスト採用」も「就活アウトロー採用」と同じように、若者を組織の“機能”として企業に「マッチング」させるのではなく、企業と若者がお互いに理解・共感し、信頼し合うことを目指した「リレーションシップ」を重視しています。ナルシストな若者たちは、おそらく誰よりも自分の様々なコンプレックスや葛藤と向き合ってきたはずです。それをあえてオープンにして触れ合っていくことが、「軸」をベースにした「柔らかさ」をもたらす鍵になるはずです。そして、支配、従属、迎合といった安易で古ぼけた関係性を破壊し、必ずや新しい“絆”が生まれてくるはずだと信じています。

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