2014年6月27日(金)

護衛艦「たかなみ」のポークカレー

dancyu 2012年8月号

文・梅澤 聡 撮影・本野克佳

海上自衛隊は毎週金曜がカレーの日?

給養員の仕事はハード。約150人分もの調理を日々こなさなければならない。

来た。ついにこの日がやって来たのだ。あの噂が本当なのかを確かめる日が……。自衛隊カレーにまつわる噂には枚挙にいとまがない。

曰く、海上自衛隊では帝国海軍時代の伝統を受け継ぎ、長い艦上生活において曜日の感覚を保つため、今も毎週金曜日にカレーライスを食べる習慣が守られている。曰く、隊員たちは帰港の日を待ちわび、残りの航海期間を「あと何カレー」とカレー単位で数える……などなど。その真偽を確認すべく、護衛艦「たかなみ」に乗艦した。

甲板に出ると、日印共同訓練のため横須賀港に停泊していたインド海軍の艦船に遭遇。案内してくれた広報係長は「食事時になると、スパイシーな香りが漂ってくるんです。やっぱりインドの人は毎日カレーなんですねぇ」と笑う。嘘のようだが本当の話だ。

調理を担当するのは「給養員」と呼ばれる調理のプロたち。「長いときには数カ月間を艦内で過ごす隊員たちにとって、食事は唯一の楽しみ。まずいメシを食べていたら、士気に影響してしまうんです」と語るのは、給養員のリーダー、給養員長だ。

「たかなみ」ではポーク、チキン、ビーフ、シーフード、そして素揚げした茄子と挽き肉を使ったナスカレーの5種類がラインナップされている。なかでも隊員たちに好評なのがシーフードカレー。母港である横須賀は三浦漁港に近いため、新鮮な海の幸が、えも言われぬ滋味を生み出すのだという。

これが「たかなみ」特製のポークカレー。食器はすべての献立で使用する金属製プレート。副菜、牛乳、サラダ、ゆで卵、果物を加えて栄養バランスをとる艦が多いという。この日はエビカツが付いていた。

正午になると士官室に案内され、程なくカレーが運ばれてきた。この日は、ポークカレーである。いよいよ海自カレーとの遭遇だ。一口含んで、その濃厚さに驚く。まるで“翌日のカレー”のような味わい……お代わりをどうぞ、の声に、無意識のうちに皿を差し出していた。

噂については、ただ一点を除いて真実だった。「かつては土曜日がカレーの日でした。停泊中の土曜日は“半ドン”のため、午後からの上陸(外出)に備えて、手早く食べて手早く片付けられるカレーは好都合だったんです」と下野艦長。

なんと、“金曜日はカレーの日”は、帝国海軍時代からの伝統ではなく、1980年代からの習慣だったのだ。ともあれ、海自のカレーは噂通りの満足度120%。次の機会には、ぜひ「たかなみ」のシーフードカレーを食してみたい。

隠し切れない隠し味!

写真は、すべて隠し味的に使う調味料。その種類も量も多い!

艦は男所帯ゆえ、濃い味が好まれるというのもあるが、ここに給養員の工夫がある。まず艦内にはスープストックなどをつくっておく余裕はない。また、じっくり煮込んで旨味を出すといった悠長なことも言っていられない。限られた燃料、水を効率よく使うためだ。ゆえに短時間のうちにスープにしっかりとしたコク、スパイス感を出すため、たっぷりの隠し味を使うのである!

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梅澤 聡