現場をいちばんよく知っているのはスタッフである

シュルツさんのリーダーシップのもとで、リッツ・カールトンは経営品質を讃える米国のマルコム・ボルドリッジ賞(The Malcolm Baldrige National Quality Award:MB賞)を1992年、1999年と2度に渡り受賞しています。これはレーガン政権下、米国の国家的競争力の向上をはかるために創られ、優れた経営システムを有する企業を、大統領が表彰する栄誉ある賞です。

しかしシュルツさんは、決して「効率化」を目的としていたわけではありません。効率化はあくまでも手段であり、その目的は、お客様に提供できるサービスの質を高めるため、そして、働くスタッフの個の存在を認め、創造性を高めるためのものなのです。

「あなたは『機能』として『働かされている』のか、それとも、『進んで働いているのか』」、シュルツさんは私たちに問いかけます。

「命令のもとに、仕事しなければならない環境におかれていたとしたら、あなたは機能として働かされています。テイラーシステム(科学的管理法)がよい例です。トップが細部まで考え、指示を下し、スタッフはそれを忠実に遂行する機能とみなされます。

彼らは仕事をさせるために人を雇います。しかし、それは人を椅子扱いすることと同じだと思います。そのようなことは私にはできません。

現場をいちばんよく知っているのはスタッフであり、彼らの考えは尊重されなければなりません。私の判断にはいつも、この考えが前提にあります。スタッフを仲間に迎え入れ、目的を共有し、彼らが『進んで仕事したい』と思う環境をつくるのがリーダーシップなのです」(シュルツさん)

意思を持ち、感情を持つ人間同士のコミュニケーションは、お客様との間であれ、スタッフとの間であれ、たがいに温かみを持ちあわせている限り、コンピュータに優るものであり続けます。それが目に見えない絆を広げていけると信じています。

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