仕事も家庭も壊れてしまうんじゃないか

警視庁光が丘警察署長 原きよ子さん。警視。現在、警視庁内で唯一の女性署長。これまでで5人目。

私は同じ警察官の夫と結婚し、その頃はちょうど娘が小学校低学年の時期でした。ある特捜本部に従事していたために仕事は激務、朝6時前に家を出て帰るのは夜10時過ぎという生活が続いていたんです。そのせいか子供が精神的に不安定になってしまい、このまま警察官を続けるのか、それとも辞めるのかという選択を迫られるような思いでした。後にも先にも、仕事を辞めなくてはならないかもしれないと思ったのはそのときだけです。

当時は育休がありませんでしたので、産後は4カ月で復帰し、しばらくは時短と保育ママさんを活用し、その後は家の近所の方や交通少年団の役員の方、それから姉にお願いしたりしながら、綱渡りのような子育てを続けてきました。お給料は全て保育料に消えてボーナスだけが辛うじて残るという状態でしたが、それでも仕事を続けられるだけ有り難いという気持ちでいたんです。

ただ、それも特捜本部にいたときは、このままでは仕事も家庭も全てが壊れてしまうんじゃないか、というところまで追い詰められてしまって。自分の頑張りだけならどうにでもなるけれど、自分の努力だけではどうにもならないことがあることを痛感しました。それは「やる気は経験を超える」とばかりに働いていた私にとって、大きな岐路でした。