2014年6月13日(金)

「ナポリピッツァ」旨さの秘密【4】食べ方

dancyu 2012年3月号

文・井川直子 撮影・kuma* 教える人:河野智之(「ピッツェリアGG」ピッツァイオーロ)

デリバリースタイルのアメリカンピザの影響で、われわれ日本人はトッピングが大好きだ。あれもこれものっけてしまい、あれはあれでやっぱり旨いと思う。
でも、ナポリピッツァでは、そうもいかない。クラシカルなメニューは、初めて見たときには、ちょっとしみったれてるな、と思うほど具がシンプルなものだ。というのも、ナポリの日常食であるピッツァは、まず安くて旨いことが求められる。その帰結として、材料はシンプル、そして生地がとびきり旨いことが最重要課題なのだ。

ピザカッターなんて、いらない

「ナポリのピッツェリアとは、こういうものだと伝えたい」

それがナポリを愛する男子3人の店「ピッツェリアGG」の使命感である。だから日本人向けに味をアレンジしたりしないのはもちろんのこと、ピッツェリアのスタイルも現地そのまま。

たとえば、そもそもナポリでピッツェリアといえば、ピッツァ専門店のことであり、ピッツァのほかは簡単な揚げ物だけ、というのが一般的。メインの料理やパスタはない。寿司屋に寿司とお造りしかないのと同じである。料理も置く店は「ピッツェリア・エ・トラットリア(またはリストランテ)」と看板を掲げる。ピッツェリアであるGGは、だからピッツァと揚げ物に徹した店だ。

またピッツェリアで、ナポリ人は1人1枚ペロッと平らげる。ピッツァはおかずの一品じゃない。1枚で腹を満たす完全食だから、決してシェアしたりはしないのだ。ラーメンをシェアしないのと同じ感覚である。焼き上げたピッツァは皿にのって丸のままテーブルに運ばれ、切り目は入っていない。カッターで店の人が切り分けてくれるのは、おそらくアメリカのピザか、日本発祥のサービスだろうと思われる。

「ピッツァは自分で、ナイフとフォークで切って食べます。ナポリ人は、店の人が勝手に切るなんて嫌がるだろうな。切った時点でソースやオイルが生地にしみ込み、だれるのが早くなってしまうから」と河野さん。「ピッツェリアGG」では希望があった場合のみカットするが、基本的には丸ごと出してお客さん自身が好きに切る、ナポリスタイルを貫く。

とはいえ、日本ではピッツァの食べ方がきちんと知られていないのもまた事実。そこで店のメニューにイラスト描きで、食べ方を指南している。

単に適当な一口大に切って食べるのもノープロブレムだが、河野さんがお勧めするのは「巻く」方式だ。

まず、ナイフとフォークで円の中心から2方向へ切り目を入れ、三角形のピースを切り離す。そのピースの頂点から、縁に向かってクルクル巻いていき、筒状になったものをさらに2等分に。食べやすい大きさを、パクリとどうぞ。

「こうすれば手も汚れず、縁も残らない。全部おいしく食べられます」

「これが正しいから」ではなく、現地の人は、やはりおいしい食べ方に長けている。渾身のピッツァをベストな状態で楽しむために、見習って損はない。

ナポリピッツァの食べ方

1.ナイフとフォークを使い、円の中心から縁に向かって2本切り目を入れる。1ピースが、適当な大きさの三角形になるように。

2.1ピースの頂点から縁に向かって、クルクル巻いていく。逆方向に巻くと、ソースも具もはみ出してしまうので注意。

3.縁まで巻き切ったところで、一口大になるよう真ん中で2等分にカット。もちろん、一口で入るならそのまま食べてもOK。

4.フォークで刺し、パクリ。手を汚さず、ソースも垂れず、縁も残らない。クルクル、パクリのこの流れ、ナポリ人は早い!


河野智之/ピッツァイオーロ
1981年、東京都生まれ。大学卒業後、22歳からナポリの「マリーノ」で1年10カ月修業。半年目から生地づくりを任される。帰国後、「サルヴァトーレクオモ」で3カ月を経て東中野「ピッツェリアGG」の職人となり、2010年11月に吉祥寺で独立。今でも年1回、現地の味を忘れないようナポリを訪れている。

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井川 直子