「いまの経営陣は新しい商品をつくった経験がない」

かつてのソニーには、経営陣に創業者の井深大氏や盛田昭夫氏のほかにも、ビデオテープレコーダーの国産第1号を開発した木原信敏氏やウォークマンを開発した大曽根幸三氏、ゲーム機「プレイステーション」を開発した久夛良木健氏など、時代を彩った商品を生み出した人たちが経営の中枢にいた。

しかし、現在は違う。

「いまの経営陣は新しい商品をつくった経験がなく、与えられて仕事をこなしてきた人ばかり。上の顔を伺い、立ち回るのがうまい保身の得意な連中が並んでいる。そんな人たちにソニーを立て直せと言うのが無理なのかもしれない。それは、事業部長クラスにもいえる」

と、あるOBはあきらめ顔で話す。

その端的な例が、パソコン事業かもしれない。担当役員の交代を機に、当初の方針を大転換。年1000万台の出荷を目指して、質より量を追うようにした。それまでのVAIOとかけ離れた安物を大量につくるように指示されたという。しかも、つくるのが難しい製品や手に入りにくい部品の採用を避けるようになり、人気商品でも利益率が低いと切り捨ててしまった。

その結果、商品力と開発のモチベーションが大きく低下する事態を招き、パソコン事業を譲渡する羽目になった。