発電・節電効果で
エネルギー自給率も向上

鈴木伸一●すずき・しんいち
一般社団法人 太陽光発電協会
事務局長

1982年に三菱電機株式会社入社。同社および関連各社にて電材住設事業、ならびにAV・エアコン等の家電空調事業に携わる。96年より太陽光発電システム事業に従事。2013年6月より現職を務める。
──太陽光発電の普及は、社会にどのような影響を与えますか。

【鈴木】まず、小規模の太陽光発電が普及すると、発電に加え、節電の効果も期待できると思います。これは、住宅用など10キロワット未満の太陽光発電でつくった電力は、使用した後の余剰分を買い取る制度になっているため。節電をすることで余剰電力が増え、売電量を増やせるという仕組みをつくった上で、電気の発電量、使用量、売電量を数値として表示することで、「せっかく売れるのだから、電気を無駄に使わないようにしよう」という心理が働きます。経済合理性の面から節電を促すわけです。

10キロワット以上を超える中規模、大規模の太陽光発電でつくった電気を全量買取にしたのは、電力の安定供給を狙ってのことでした。東日本大震災によるエネルギー危機の問題もあり、一定の電力を早急に確保するため、大規模な発電システムを導入するインセンティブとしたわけです。実際にこの方法が功を奏し、中規模、大規模の産業用太陽光発電が一気に広がりました。

2020年には、太陽光発電全体での発電量が50ギガワットになると見込まれています。これは、日本の全消費電力量の約5%にあたります。しかもこの5%は夜などの非発電時も含めた数値で、最大発電時は15%以上になる。電力の使用量がピークを迎えるのは夏の昼間で、この時の需要が供給可能電力の90%を超えることもあります。太陽光発電はその時に力を発揮できる。これも太陽光発電の大きなメリットだと思います。

さらに重要なのは、太陽光での発電量を増やすことで、火力での発電量を減らせることでしょう。よく「原子力発電の代わりに再生可能エネルギーでの発電を進めよう」という意見が聞かれますが、再生可能エネルギーは発電量の調整がしやすい火力の代替として考えるのが現実的。火力での発電量を少なくできれば、化石燃料の輸入コストを減らし、エネルギーの自給率を上げ、CO2の排出量も削減することができるわけです。

今後はますます
リテラシーが必要になる

──太陽光発電の今後の可能性と課題についてお話しいただけますか。

【鈴木】日本の太陽光発電関連産業は、太陽光パネルの海外輸出という形で始まりました。産業としては、普及してもそれほど多くの雇用を生まないともいわれていますが、ここ数年で国内の関連産業にシステムの施工、運用、制御などのノウハウが蓄積されており、このノウハウとシステムの品質、信頼性を合わせれば、将来的には太陽光発電プラントをシステム運用も含めたパッケージで輸出するといったビジネスも可能。雇用増に貢献する可能性は十分にあります。

太陽光発電は、発電量が天候に左右されるなど出力が安定しない面があり、それが電力系統に好ましくない影響を与えるのではと危惧する声もありました。しかし実際に導入が進み、十分コントロール可能であることも実証されています。メガソーラー施設などでは電力を双方向に送るスマートグリッドの運用データなども集まり、試験のレベルを超えてより本格的に取り組む足がかりもできつつあります。

──最後に、太陽光発電の導入を考えている人にご助言をお願いします。

【鈴木】まず、太陽光発電システムは今後10年、20年使うものだということを前提に、長期的な品質や信頼性なども重視して検討した方がいいでしょう。そして今後は、太陽光発電についてのリテラシーを高め、信頼できるパートナーをしっかり選ぶということがより大切になってくると思います。

この1年半の間に、国内の関連産業の間に太陽光発電に関するノウハウが蓄積され、顧客に対して深い助言ができるプロが急速に増えました。ただ、当初の手探りの状態が一段落すると、こうした知識レベルのギャップにつけいろうとする業者が出てくるのが世の習いでもあります。資源エネルギー庁も「太陽光発電については、普及・拡大のスピードに、リテラシーの向上が追いついていない」と繰り返し発言しており、注意が必要でしょう。

システムを導入する際も、疑問があればどんどん質問すべきですし、その対応で相手が信頼できるかも見極められます。基礎的な知識は各メーカーのサイトなどでも得られますし、当協会も相談センターを、経済産業省も相談窓口を設けています。ご自身でリテラシーを高めつつ、そうした窓口も活用しながら、パートナーを賢く選んでいくことが大切だと思います。