再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入で、急速に広まりつつある太陽光発電。そのメリットや将来の可能性、今後の課題や導入のポイントは何か。一般社団法人 太陽光発電協会 事務局長の鈴木伸一氏に語ってもらった。

予想を超えるスピードで
広がる太陽光発電

──まず、国内外の太陽光発電の導入状況についてお聞かせください。

【鈴木】2012年7月、日本でも再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートし、太陽光発電が急速に広まっています。2013年現在の太陽電池の国別導入量(累計)を見ると、10年以上前から同様の制度を取り入れていたドイツがトップです。

ただ、ドイツでは買取価格が当初の1キロワット時当たり最高100円程度から15円ほどに変更され、普及もある程度進んで伸び率が鈍っています。一方、日本は同制度を導入した2012年以降、太陽電池の出荷量(右図参照)が非常に高い伸び率を示しています。2011年度に1.4ギガワットほどだった出荷量が、2012年度では約3.8ギガワットと1年で2.7倍。2013年度は8ギガワット超になることは間違いないでしょう。

売電を行うために国から設備認定を受けたシステムの発電容量を見ても、2012年度以前はパワーコンディショナベースで累計5.3ギガワットだったのが、導入から2014年2月までの1年8カ月で39ギガワットにまで伸びています。これは太陽光パネルに換算すればおよそ48ギガワットです。

2020年時点でのドイツでの太陽光発電の導入状況は、現状を考えれば45ギガワットを超えるかというところ。翻って日本では、50ギガワット以上になると予測されます。現在第2位の中国の伸び率しだいですが、日本が太陽光発電で世界トップになる可能性は十分あるでしょう。

固定価格買取制度の導入により、日本でも太陽光発電が容量ベースで2倍~3倍になるといった予測は出ていました。しかし実際には予想をはるかに超える数字になっています。これは一つには、日本の将来を支えるエネルギーとしての再生可能エネルギーの重要性が、国民レベルで認識されていたことが大きかったと思います。先日の政府のアンケートでも、9割を超える人が再生可能エネルギーの必要性を肯定していたように、東日本大震災などの影響もあって幅広いコンセンサスができていた。そこに長期的な安定収入が期待できる固定価格買取制度の導入や、グリーン投資減税制度の改定による税制上の優遇措置が加わり、気持ちと経済合理性のかけ算によって普及が大きく後押しされたのだと思います。

選ばれる理由は
導入しやすさと技術の進歩

──日本の固定価格買取制度は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスで発電された電力が対象です。なかでも太陽光発電がこれだけ広まった理由はどこにあるのでしょうか。

【鈴木】スペースに対する効率で考えれば、風力発電が太陽光発電を上回るなど、ほかの再生可能エネルギーにもさまざまなメリットがあります。そのなかで太陽光発電がもつメリットというと、まず「導入のしやすさ」が挙げられるでしょう。

太陽光発電システムは、住宅用の小さなものからメガソーラーなどインフラともいえる大規模なものまで幅広いタイプがあり、環境アセスメントなどの面での制約も比較的少ない。一定の条件を満たせば導入までのハードルが低いという取り組みやすさが、普及につながっていると思います。

また、技術面での急速な進化も導入増に寄与しています。最新型の太陽光パネルの発電効率は、量産されているものに限っても当初の2倍。さらに、発電量あたりのコストが飛躍的に小さくなっています。20年前、一般的な住宅用の太陽光発電システムでは、1キロワットを発電するためにおよそ200万円のコストがかかりました。これが10年前は1キロワットあたり約70万円、今なら平均で30万円台と、大幅に下がってきている。現在では住宅用に多い4~5キロワット程度のものなら、160~200万円前後で取り付けることができます。メガソーラーなら安いもので1キロワットあたり20万円そこそこで、20年で価格はおよそ10分の1。実はこの発電量あたりのコストの低下が、普及率に大きく影響しているのです。コストが着実に下がるなかで、いずれは固定価格買取制度がなくても、太陽光発電で自宅の電気をまかなう方が経済的という時代が来るかもしれません。