バランスシートを作る目的は、定年退職までに負債をゼロにして純資産をできるだけ大きくすることです。毎年バランスシートを作っていけば、目標に近づいているかどうかが分かります。退職直前になってから、問題があることに気づいても解決策は限られます。できるだけ早めに実践しましょう。

もうひとつ重要なのは、夫婦で合算して計算すること。共働きの場合、互いに財布の中身を秘密にしていることも少なくありません。その場合、収入が多くても支出が多く、意外に貯まっていないご家庭もあり、合算しなければ現状が見えてきません。互いに別々に作ってもよいのですが、その場合には年に1回は情報公開をすることが大事です。

お金の管理シートで
資産の偏りを防ぐ

竹川美奈子●たけかわ・みなこ ファイナンシャル・ジャーナリスト

出版社勤務を経て独立。1999年ファイナンシャルプランナー資格取得。マネー誌を中心に執筆活動を行う一方、多数の企業セミナーの講師を務める。『新・投資信託にだまされるな!』『あなたのお金を「見える化」しなさい!』ほか、著書多数。

お金の管理シートを作ることも有効です。これは保有している資産を一覧表にするものです。預金は除き、株式や投資信託など保有しているリスク商品が時価でどのくらいの価値があるのかを商品ごとに一覧表にします。

さらに、それをアセットクラス別に分類します。実は、商品ごとに整理をするだけでは、リスクの度合いが見えにくくなってしまうのです。例えば、10本の投資信託に分散したつもりが、よく見るとすべてREIT(不動産投資信託)関連のものだったりします。これでは分散効果はありません。

それを見える化するためにアセットクラス別に整理して円グラフなどを作ると効果的です。偏りがあれば多すぎるものを売却して、少ないものを買い増すことができます。これを半年に1回、あるいは1年に1回、作っておくとよいでしょう。

アセットクラスの配分も人それぞれです。自分に合った配分を決める際には「どのくらい資産を増やしたいか」ではなく、「どのくらいの資産が減ると怖いか」を基準に判断した方がいいでしょう。

もし、自分で判断ができなければ、1年間の貯蓄額を最大損失と想定してもいいでしょう。毎年100万円を貯蓄できるのであれば、仮に100万円の含み損を抱えたとしても、新たな貯蓄・投資用の資金が投入できるので、1年後の金融資産が極端に減るという事態は避けられます。

例えば、リーマンショックのときは、内外の株式と債券に4分の1ずつ投資をしていた場合、最大で30%程度の損失が発生しました。それを前提にすると、最大100万円の損失を覚悟すると、逆算で333万円程度までは投資に資金を振り向けることができます。

許容できる損失は、率ではなく金額で判断することも重要です。同じ30%の損失でも100万円の投資であれば30万円ですから、それほどショックは大きくないかもしれません。ところが1000万円の投資であれば、300万円の損失になります。初心者であれば動揺して、一番値下がりしたときに売却してしまうかもしれません。これを避けるために、金額で考えることをお勧めします。

何かしなければと思っているがなかなか行動に移せない──。こんな人が多いのではないでしょうか。この機会に家計の見える化から始めてみてください。レコーディングダイエットと同じで、見える化することで改善効果が出やすくなります。最初は手間のかかる部分もありますが、慣れれば楽しくなってきます。ぜひチャレンジしてみてください。