しかし、このまま中高年向けの店づくりを続けていればジリ貧でしょう。私からいくつか提案があります。

ひとつは、酒好きの若者を狙うこと。全体としては酒離れが進んでいても、飲む人はいます。大人数ではなく、小人数で集まるようになっているので、彼らが過ごしやすい店をつくる。たくさん飲んで大騒ぎができるように個室を用意する、酔いすぎてしまってもいいように「ゲロ歓迎居酒屋」をつくる、といった戦略もあり得るでしょう。

もうひとつは、長時間滞在に対応した店づくりです。ファストフード店などでは「長時間の占有はご遠慮ください」といった掲示がありますが、これは食事が済んだ後も(ときには注文もせずに)、居座る若者に向けた注意書きです。こうした様子を、社会学者の宮台真司氏は「仲間以外はみな風景」と評しました。仲間には気を遣っても、それ以外の人には無関心。「居座ることは悪い」という感覚すらない。こうした若者に厳しく対応する店も増えつつあります。彼らの居場所として、時間ごとに課金するマンガ喫茶のような居酒屋がウケるかもしれません。

イベント性を高めるという手もあるでしょう。同じく若者離れに喘いでいたスキー業界では、「19歳はリフト券無料」というキャンペーンを展開して注目を集めました。「いまだけ」という特別感を演出することで、将来の顧客の獲得に成功しています。

若者に限らず、これからの居酒屋は「全国に同じ店をチェーン展開する」という手法では難しいでしょう。年齢や飲み方に応じて、個性のある店づくりを進める必要があるはずです。

※1:総務省「家計調査通信 472号(平成25年6月15日発行)」によれば、ビールや発泡酒などについて40~49歳では年間54.3リットルを購入しているのに対し、29歳以下は27.1リットルだった。
※2:総務省:統計トピックスNo.66「『巳(み)年生まれ』と『新成人』の人口―平成25年 新年にちなんで―(「人口推計」から)」(平成24年12月31日)より抜粋。

(構成=三浦愛美)
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