資材や人件費の高騰、消費税や相続税の改定など不安定な要素を含む日本のマンション市場にあって、唯一、資産価値の上昇が見込めるのがプレミアムマンションだ。その最新の傾向と選ぶポイントを不動産コンサルタント 長嶋修氏にうかがった。

プレミアムマンションは
消費税増税も影響なし

長嶋 修●ながしま・おさむ

不動産コンサルタント。1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。テレビなどメディア出演、講演などで活躍。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。最新刊は『これから3年 不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)

この4月から消費税が増税されましたが、前回のときのような大幅な駆け込み需要や売主側の押し込みという動きは見られず、特にプレミアムマンションについてはほとんど影響がないと思います。それよりも、実質増税となる来年から実施される相続税の改定や、資材費・人件費の高騰のほうが市況に与える影響は大きいでしょう。

特に震災復興や五輪開催に伴う資材・人件費上昇の影響は顕著で、2009~10年にはファミリータイプであれば一戸当たり1500万円台で建設できたものが、いまや2300万円でもできない状況です。ただし、これは異常な高価格というわけではなくて、07年当時のプチバブル期とほぼ同水準になっているだけです。

プチバブル期には「旧価格」「新価格」「新々価格」と上がり続け、旧価格から1.1倍、1.2倍となった時点でリーマンショックが起こりました。価格水準については、現在は当時でいう1.1倍程度。それでもこれ以上、上昇すると、かつてと同じ水準になりますので、そのとき市場がどうなるかはまだ誰にもわからないという状況です。

世界的に見て割安な、
都市部の地価

ここで、当時と現在で決定的に異なるのは、まず供給戸数です。国土交通省の統計によると、新築マンション着工戸数が06年は24.2万戸に対して、13年は12.4万戸。立地性向もまったく違います。プチバブル期には郊外にスプロールしたのに対して、今回は基本的に都心回帰。郊外立地であっても、駅前の超一等立地であるなど、かなり限定されています。

こうした好立地であれば供給する側、購入する側、双方が安心して動けますし、ファンドなど別のマネーが入ってくる余地もある。いまだここには資産価値を押し上げる要素があります。

じつはいま、日本の都心部の地価は世界的に見て割安となっています。ニューヨークやロンドン、シンガポールなど世界の主要都市と比べると、東京は1~2割程度安いので、世界的に知名度のある日本の都市やエリアについては、今後も数段上昇する余地があります。一方で、それ以外のエリアでは全体としてなだらかに下降していくという方向でしょう。

超一等立地の高額マンションは中古でも価値が下がりにくく、むしろ上がるものもあるという傾向はすでに実証されていますので、そういう意味では、プレミアム物件は新築マンション市場の中で、将来にわたって非常に有望であるといえるでしょう。

今後の動きを考えるとき、プレミアムマンションは株式や債券など他の投資先とのバランスの中で、不動産がどのような比重になっているか。あるいは、世界的な不動産市場の中で、日本の都心部のマンションがどういう状況にあるか──を見なければなりません。この点では、株式市場は軟調に推移し、債券には金利上昇圧力がかかっていますので、不動産が有利だということはある程度いえると思います。

エリアでいえば、東京であれば基本は都心3区(千代田区・中央区・港区)、または5区(上記3区と新宿区・渋谷区)などで、しかも誰もが知っているような立地であること。また、駅からの距離に対するニーズも次第に短くなってきています。10年前は「徒歩10分以内」でしたが、いまや都心部で供給される物件の90%がこの圏内にありますから、現状のニーズは「7分以内」になっています。これは将来、もっと短くなるかもしれません。