新しい商品を開発するには、知識を詰め込む「ラーニング」ではなく、身につけた知識や常識を壊す「アンラーニング」が必要です。とはいえ一度身についた常識を払いのけるのは大変なこと。それならば最初から常識のないほうが、飛躍できる可能性が大きい。

女性が商品開発に向いているもう一つの利点は、精神的余裕です。男性は「自分が稼がなきゃ」と思うから余裕がない。会社も辞められませんし、上司にも逆らえない。無難な攻め方しかできません。その点、女性の多くは「いざとなったらどうにでもなる」と開き直れます。男性が職場と自宅の往復で1週間を終えるのに対し、女性は積極的に街に出て、ショッピングや飲み会を楽しむのも特徴的です。情報のアンテナが広く、自由な発想にも繋がりやすいのです。

もちろん女性なら誰でも企画力に優れているわけではないでしょう。ここでは男性と女性の特質の差をあえて類型的に説明しましたが、重要なことは、男女の違いよりも、前例にとらわれないチャレンジを後押しできる態勢が整っているかどうかです。

大きく失敗したくないなら、チームに1人だけ女性を入れて「女性目線を取り入れた」と言えばいい。しかしまったく新しい商品の開発を目指すならば、メンバー全員を女性(や素人)にするぐらいのチャレンジが求められます。はたしてその責任を負う覚悟があるか。リスクのないところに成功はありません。

本来、リスクのあるチャレンジは資本に余裕のある大企業のほうがやりやすい。ところが大企業ほど「失敗を避けたい」という風潮が強い。ベンチャー企業が女性の登用に長けているのは、そうした「社内の理屈」にとらわれないからかもしれません。

K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授 三谷宏治
1964年生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。INSEAD、MBA修了。外資系コンサルティング会社を経て、2007年より現職。『一瞬で大切なことを伝える技術』など著書多数。
(構成=三浦愛美 撮影=プレジデント編集部)
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