足ることを知れば、真のリッチへの道が

しかし、本当の金持ちにせよ、その財を築き上げる過程では、承認欲求が満たされずに葛藤した段階があったはず。どのように彼らは脱したのか。塚越さんがマズローの「自己実現」をキーワードにしながら説明する。

「承認欲求が満たされずにもがき苦しむ人のなかに、『もういいや』と成金生活に終止符を打てる人が出てきます。『足ることを知る』わけです。すると利他的な心が生まれ、社会のために自分の能力を何か役立てたいと考え始めます。それが自己実現であり、事業のさらなる飛躍にもつながっていきます。『足るを知る者は富む』の通りなのです」

確かに、鉄鋼王のカーネギーをはじめ世界のスーパーリッチは多大な慈善事業を行っている。が、何も天を仰ぎ見るような偉人ばかりではない。ジャーナリストの山田順さんは、ITバブル以降に誕生した資産何十億円、何百億円の“ニューリッチ”のなかで、ライブドアの堀江貴文さんと村上ファンドの村上世彰さんの生きざまの違いに着目する。

「堀江さんは選挙に出馬したり、自分の金銭哲学に関する本を書いてきました。ライブドア事件の禊(みそぎ)が済んでからは宇宙事業への意欲を見せていますが、それらは自己顕示欲から出ているのでしょう。一方、『ものいう株主』だった村上さんは06年にシンガポールに移り、インサイダー事件で起訴された後はほとんど活動していない。彼の目的は日本の資本主義に風穴を開けることで、ある程度実現できたとの思いがあるのでしょう。07年にはNPOに寄付を行う中間支援団体の理事に就任し、約20億円も拠出しています」

これからも時代の変遷とともに、さまざまなタイプの社会貢献を目指すお金持ちが生まれてくるのだろう。

埼玉・川口で金属スクラップ販売の「磯貝商店」を営む磯貝清明さん(http://president.jp/articles/-/12443)は応援してくれている母親や妹、仕事仲間にいつか恩返ししたいと、本業に勤しむ毎日だ。すでに罰金は払い終わり、1億6000万円あった所得税も5000万円を切った。「2年以内には完済したい。『神は乗り越えられる試練しか与えない』といいますよね。絶対に乗り越えてみせます」と語る磯貝さんは、自らの失敗を通して足ることを知った人なのだ。第二の人生を迎え、どんな自己実現を果たすのか、この目で見てみたい。

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