「ラ・ファーファ」では読者モデルのスリーサイズを明記している。ぽっちゃりさんの体形は様々なので読者が参考にする一助としての工夫だ。

広く世間に「可視化」されたきっかけは、なんといっても、XLサイズ以上のぽっちゃりさん専用ファッション雑誌「ラ・ファーファ」(ぶんか社)の創刊だろう。「ぽっちゃり」と「カワイイ」を足して「ぽちゃカワ」とポジティブに表現し、大きな体でもファッションを楽しもう、と提案する。

13年3月に芸人の渡辺直美さんを表紙モデルに抜擢し、発売日に即日重版、最終的に10万部を売った。ふくよかな女性のためのファッション雑誌という前代未聞の雑誌の登場は、さまざまな媒体でニュースになったので、ご存じの方も多いはず。ちなみに、あの「アンアン」(マガジンハウス)の平均部数が20万部程度。その半数を売ったのだから、大健闘と言っていい。13年は派手に創刊した女性誌がいくつかあるが、どれも成績は芳しくない。その中で8万~10万部をキープし、昨年11月にめでたく季刊から隔月刊になったラ・ファーファは、地道に成功している「勝ち組」だ。

「キャンキャン」2013年7月号の「ぷに子」大特集。「ぷに子とおデブの境界線」を提示した記事も。155cm、68kg以上はおデブと定義。

もう一点、ぽっちゃりおしゃれ市場を見渡すうえで忘れてはならない重要なトピックが、13年の「キャンキャン」(小学館)5月号の企画「ぷに子」だ。

「ぷにぷにした女の子」が今モテていると、Lサイズの「普通の女の子」をプッシュ。翌々月の7月号では大特集を掲載し、その後も「ぷに子プロジェクト」を加速中である。

キャンキャンはまぎれもなく、日本の「普通の女の子」のトレンドをひっぱってきた雑誌のひとつ。そのキャンキャンが、誤解を恐れずに言えば、「痩せなくてもいい」と宣言したのである。もちろん、「モデルのように痩せなくてもいい」という意味であって、「太れ」と推奨してはいない。ぷにっとした普通体形の女の子が、ちょっとの工夫でよりかわいく見える提案をしただけである。それでも、細い体が美しいとされ、ダイエット記事が常に満載の女性誌界において、キャンキャンのチャレンジは「事件」であった。

ラ・ファーファがターゲットとするXLサイズ以上の読者像とキャンキャンが推したLサイズの読者像は同一ではない。とはいえ、「モデル体形でなくてもいい」という提案は共通だ。さらにラ・ファーファ創刊が13年3月21日、キャンキャンのぷに子初登場号が同3月23日発売。両編集部に確認したが、お互いに内容を知らなかったという。不思議な符合といえるのではないか。いずれにしても、こうした一連の動きが重なり、「ぽっちゃりおしゃれ市場」が注目されているのだ。

ラ・ファーファ編集長の今晴美さんは「太っている人はおしゃれをしないからファッション誌の需要はない、と思われていました。しかし、絶対にそうではなかったんです」と強調する。

「私自身も背が高く、ややぽっちゃり体形ですが、昔からファッションは大好き。多少大きいからといって、ファッション誌からもアパレル市場からも排除されがちな状況はおかしいと考えていました。けれども最近、状況に変化を感じていたのです。大きな体であってもザラやフォーエバー21など、サイズが豊富な外資のファストファッションを上手に着こなしている人がいますし、日本のアパレルも大きなサイズを作るメーカーが増えています。そこで、このタイミングを逃すまいと会社を説得し、創刊に踏み切りました」