資金やエリア、用地など
企業のニーズに細かく対応

浦川竜哉●うらかわ・たつや
大和ハウス工業(株)
常務執行役員
1985年、大和ハウス工業に入社し、建築営業の業務に従事。現在、建築事業を統括する。

「DPL」とは、「ダイワハウス プロジェクト ロジスティクス」の略。そして「D(ダイワハウス)プロジェクト」とは、大和ハウス工業が展開する施設建築の事業スキーム。つまり「DPL」は同社の独自ブランドだ。すでに首都圏や中部、関西など、全国で多様な物流センターを建設しており、「今後も市場ニーズに応えられるよう、開発スピードを加速させていきたい」と浦川氏は言う。

ではなぜ、Dプロジェクトが好調なのか。その秘密は、まさに独自のスキームにある。

これまで事業施設の建設では、地主にテナントを紹介して建築請負を行う形が多かった。しかし同社では、20年以上前から定期借地権を活用したスキームを確立。土地所有者の投資リスクをなくす一方で、企業の細かなニーズに合わせた施設開発を可能にした。さらに2003年にはSPC(特定目的会社)を利用した大型物流施設の開発を国内で初めて実現。いまでは当たり前となった「不動産流動化方式」の先鞭もつけている。

このDプロジェクトでは現在、「賃貸事業スタイル」「借地事業スタイル」「分譲事業スタイル」「出資事業スタイル」などのスキームで、幅広い顧客ニーズに対応。土地選定から施設の設計・建築、さらに維持・管理までのトータルソリューションを提供している。それを支えているのが、全国80カ所以上の支社・支店を核とする情報収集網だ。

「当社では北海道から沖縄まで、住宅展示場をも含む全国の拠点網から、日常的に不動産情報が入ってきます。またCRE(企業不動産)やPRE(公的不動産)などのコンサルティング業務を通して寄せられる情報も多い。さらに金融機関や不動産会社、そして何より土地オーナー様からの土地活用のご相談が、物流最適地を選ぶ手がかりになっています。これが長年にわたりお客様と信頼関係をつくってきた当社ならではの強みです」

“売れるもの”ではなく
“必要とされるもの”を

情報を生かすには、ニーズを読み取り、時には時代に先駆する覚悟が必要だ。冒頭で触れた、従来の物流施設の枠組みを超えた複合機能型センターは「物流ニーズの多様化」に対応したもの。例えば「東南アジアから輸入されるアパレル製品の簡単な加工、検品、タグ付け作業」を行う物流施設のほか、直近では「実店舗とネット通販を併合したオムニチャネル的な物流センターも登場してきている」と浦川氏は言う。

実店舗、Eコマース、ネット通販──。モノの移動をつかさどる物流は、70年代から語られてきた「第3の利潤源」という位置づけからさらに進化し、今日では新たなビジネスモデルを開く決定的要素になってきているのだ。

大和ハウス工業では、物流施設として一社専用の「BTS(ビルド・トゥ・スーツ)型」と、複数企業が入居する「マルチテナント型」の2パターンを展開中。BTS型ではテナント企業の要望に沿って細部まで作り込みを行うことで、顧客企業のビジネス戦略を支援し、マルチテナント型では最大公約数的な設備・構造で短期的な物流ニーズにも迅速に対応している。また運用面でも、環境に配慮した「ディーズ スマート ロジスティクス」を導入。太陽光発電や蓄電池などによる「アクティブコントロール」、また地下の空気を最上階に送る空気還流システムや屋上緑化など自然の力を利用した「パッシブコントロール」などで、約25%のCO2削減を目指している。

「“何が売れるか”ではなくて、“何が必要とされているのか”を考える。これが創業以来、一貫して全社員が心がけていることです。ニーズに本気で応えれば、自ずと商売は成り立っていく。すべての解は現場にあります。実際に物流センターを開発、運営していると、次の一手につながるさまざまなヒントが見えてきます」と浦川氏は語る。

物流の最前線から、次のソリューションを編み出していく。インフラの一翼を担うという社会的責務を含め、大和ハウス工業が経済社会で果たす役割はさらに高まっていきそうだ。