2014年5月23日(金)

サラリーマンのための肉食案内 ~ちょっと一杯編~

dancyu 2012年5月号

文・遠藤哲夫 撮影・岡山寛司

肉を食らい酒を飲んで、不況バテの心身に活を入れよう。と、財布を見れば、こちらも不況バテ。だが、嘆くな哀しむな、千円札1枚あれば、堂々と胸を張り、旨い肉と酒にありつける。目指すは、肉屋の立ち飲みだ。東京の、南は大井町、北は上野。さあ、大地に踏ん張って立ち、肉を食らい、酒に酔え、そして明日の労働を迎え撃つのだ。

なんだ、この店は!? まるで大人が集まる駄菓子屋じゃないか!

店に箸はない。すべては串でまかなうのだ。こんな見事なとんかつが320円とはけしからん! と言いながら、ブスッと串に刺すのである。

南の大井町は「肉のまえかわ」。60年ほど続く肉屋の看板だが、今は肉の販売はない。問屋との取引を、もっぱら肉立ち飲みに活用。おかげで安い旨い肉が食える。焼き鳥1本90円から、揚げ物は串カツ110円、メンチカツ120円から各種。酒は、焼酎のお湯割りもウーロン割りも210円、レギュラー缶ビール290円、ロング缶発泡酒270円など各種。家飲みとほぼ同じ料金ですむ。

見よ、320円のとんかつの大きさと肉の厚さ。その食べごたえを考えると、焼き鳥3本にしようか、とんかつ1枚にしようか、それとも……と千円の使い途を、あれこれ大いに迷うのも楽しい。

16時過ぎに店が開き16時半から17時ぐらいの間に店内は一杯になる。スーツにネクタイのおやじや若者で活気にあふれ、それもよいツマミになるのだな。不況続きでも、肉を食らい酒を飲んで、リーマンは意気軒昂。

メンチだけで3種類あるなんて、迷うじゃないか!

それでは、つぎ、北の上野は「肉の大山」だ。昭和35年からの肉屋であり、入り口のテイクアウトと立ち飲みのコーナーの奥、ドアを入れば肉売り場があり、レストランもある。

とくと見ろ、これが3種のメンチの断面だ! 手前からやみつきメンチ、特製メンチ、匠メンチ、しめて700円。メンチ愛好家ならば当然わかっていると思うが、全部食べてみるべきだろう。

店頭は、肉、肉、肉……のメニューで一杯だ。“大好評の大山メンチ”がひときわ目立つ。やみつきメンチ100円、特製メンチ200円、匠メンチ400円。揚げたてのその姿は、いずれもゴロッと大きく、力強い。どれにしようか迷うだろう。全部食べても700円、これにチューハイやサワー類が1杯300円だから、千円ちょうどではあるが、それではチト酒が足りない、もっと飲みたい。ここでも、たくさんのメニューを見ながら、千円で、どれだけ肉に満足し、どんだけ酔えるか、あれやこれや悩んで飲むのが楽しいのだ。握りしめた千円札1枚が、実に頼もしく思えるではないか。

大山は午前11時から営業している。月曜は酒が半額だから、開店から大賑わい。昼過ぎにチョイと立ち寄っては、メンチカツやハムカツにかぶりつくリーマンも多い。うむ。街角の安い旨い肉立ち飲みは、街の宝だな、庶民の有形無形文化財だよ。

※メニューと価格は掲載当時

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遠藤 哲夫