施設にしても在宅サービスにしても、情報がありすぎる時代。何を信じて判断すればよいのだろうか。業界のウラもオモテも知り尽くした3人のプロが、介護選びで迷うあなたをガイドする。

定年を迎えたばかりの先輩が脳梗塞で倒れた。そんな話を耳にする機会が急に増えたと感じる働き盛りのサラリーマンは少なくないはずだ。家に帰れば、妻から聞かされるご近所のうわさ話にも病気や介護にまつわる話題が確実に増えている。しかし、これらはあくまで他人事であり実感が伴うものではない。実際に「介護」の問題に直面すると、さらに無力な立場にある現実を噛み締めなければならない。

かといって、巷に情報が不足しているわけではない。有料老人ホームの選び方、介護サービスの利用方法、中には、老人施設のランキングなるものまで解説してくれる雑誌やネット情報があふれている。利用者側にとっての問題は、その中身を見分けるだけの知識と経験があまりにも少ないことである。結果的に、どんな情報をどこまで信じればよいのか。疑心暗鬼の精神状態で自身や親の介護をゆだねる場所を探さなければならない。

今回取材した、介護サービスを提供する事業者、施設選びのアドバイスを行っている専門家の一致した見解は、「自分の目で確かめる」ことを、おろそかにしたなら絶対に失敗するということである。

よい施設の見分け方を知る前に、こだわるべきポイントがあるはずだ。「終の住処」を選ぶとき、膨大な情報に接しながらも、常に念頭に置きたいことは、その場所が自分自身、あるいは親にとって居心地のよい場所であるかの判断をできるだけ正確にすることである。

「あの施設は高価ではないけれど質のよいインテリアで統一しているし、スタッフの若い人たちもみんな素直でいい人たちばかりよ」といった口コミや評判は、コメントした人の個人的な嗜好が反映された情報にすぎない。

ときには専門家のアドバイスさえ、自分には適していないかもしれない。最終的には、便せんの紙質や服地を選ぶのと同じく、“肌触り”の善し悪しを感じとるように介護をゆだねる相手を選びたい。その感覚に納得できれば、世間の評判の善し悪しなど関係なくなってしまうのではないだろうか。

※すべて雑誌掲載当時

(永井 浩=撮影)