2014年5月13日(火)

バックパッカー宿からスーツで商談へ

働き方のリアル ベンチャー篇【1】テラモーターズ 桑原康史

PRESIDENT Online スペシャル

著者
稲泉 連 いないずみ・れん
ノンフィクション作家

稲泉 連

1979年、東京都生まれ。2005年、『ぼくもいくさに征くのだけれど』で大宅壮一ノンフィクション賞を史上最年少で受賞。その他の著書に『仕事漂流』『復興の書店』など。

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稲泉連=インタビュー・構成
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テラモーターズ 桑原康史
1987年生まれ。明治大学卒業後、Panasonic Energy Tanzaniaを経て、2013年、テラモーターズに入社。14年4月よりバングラディシュ駐在員に。

今年の2月から3月までの2カ月間、商談のためにアフリカ大陸を1人で回っていました。ナイジェリア、ケニア、エジプト、エチオピア、タンザニア、南アフリカと訪れて、うちの電動三輪バイクを売り込んできたんです。

アフリカの各国ではいま都市化が進み、人々の移動手段が変わってきています。これまで彼らは主に徒歩やバスで移動していたわけですが、お金を持っている層が増えると、タクシーやバイク・タクシーの需要が増え始めます。ただ、それでも四輪のタクシーは高いので、それを解決する手段として三輪バイクがある。今回はその市場を調べに行きました。現地ではほとんどのトップディーラーや財閥の人に会い、いくつかの契約も取れました。

もともと私は学生時代から海外で働きたいと思っていたので、新卒でパナソニック・エナジーのグローバル採用に応募したという経歴があります。一昨年まではタンザニアの首都・ダルエスサラームにある電池と懐中電灯をつくる工場で働いていました。日本人は現地法人の社長だけで、入社時からタンザニア人の部下が10人いました。

アフリカでの生活には慣れていたつもりだったのですが、何しろベンチャー企業の商談ですから、やり方は大手の企業とはまったく違います。予算は100万円で、日本を出るときに社長からお金を渡された後は、航空券、ホテルの手配を含めて、すべて自分で何をするかを考えなければならない。電話や手紙で各国のキーマンに連絡し、リンクトイン(ビジネス特化型SNS)でのつながりを駆使してアポを固めてから日本を出ました。

予算が限られているので、宿泊先もだいぶ節約した「貧乏旅行」でしたね。治安が悪いと言われるナイジェリアではさすがにホテルに泊まりましたが、あとは1泊1000円のドミトリーばかり。商談の相手は財閥やテレビ局を経営しているような大富豪ですから、もちろんみすぼらしい格好をしていくわけにはいきません。だから、朝になると持っていたスーツを着て、ネクタイを締めてドミトリーから待ち合わせ先に向かうんです。彼らと会う場所は自宅の豪邸だったり高級ホテルだったりしました。バックパッカーの旅行者はそんな私を不思議そうに見ていましたね(笑)。

アフリカでは、同じように安宿に泊まって商品を売り込んでいる中国のメーカーの社員にもよく出会いました。彼らはナイジェリアで現地の正装となる服を買い、中国茶をお土産に持参してやはりドミトリーから商談に向かっていました。中国製品が世界中に広まっている理由を見た気持ちになりましたし、だからこそ負けられない、と思いましたね。

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