暗黙知【3】――間の取り方は大丈夫か?

相手の状況に応じて話を変えるためには、相手の顔色や言葉の行間を読む力も必要です。

「相手が知りたいことは何だろう」「この話に興味があるだろうか」といったことを察しながら、会話を進めていかなくてはなりません。つまり、話す力とは、「聞く力」でもあるのです。

聞く力があるかどうかは、間の取り方でわかります。聞く力がない人は、自分の話したいことを一方的に話すので、間がまったくありません。まさに「しゃべり散らかす」という表現がぴったりです。売り上げの伸びない営業担当者ほど、顧客のニーズや要望も聞かずにすぐに商品を売ろうとするのを思い浮かべてもらえばいいでしょう。

(PIXTA=写真)

一方で、コミュニケーション能力に長けた人は、間の取り方が絶妙です。すぐに本題に入るのではなく、間を取ることで相手の出方を探ります。相手の機嫌はどうか、体調はよさそうかなど相手の状態まで観察します。また、間を置きながら次の質問を考えたり、相手を会話に引き込むことで議論を活性化させ、新たな視点や気づきを得ようとします。

間とは、相手を受け入れる心の余裕だと言い換えることができます。「あなたはどう考えているの?」と相手に意識を向け、その反応を探ろうとするのが間なのです。相手の反応によっては、物事が新たな展開を見せるかもしれません。

●心に余裕がない人は、話を落ち着いて聞けない

ところが、固定観念に縛られている人は、局面が変化したときに行動を変えることができません。そう考えると、「稼げない人」が相手の話を聞くことができないのは、自分の心に余裕がないからだとも言えます。

自分のことで精一杯で、相手に興味関心を向けることができない。自分に自信がないために、心を開いて相手を受け入れることができないのです。

心に余裕を持つには、失敗も含めて場数を踏むしかありません。いま成功している人たちも、最初から自信に満ちあふれていたわけではありません。成功している人ほど失敗も多いものです。失敗から得た教訓を次の機会に生かし、少しずつ成功体験を増やしていくなかで、心に余裕が生まれてきます。

そうやって相手の話を落ち着いて聞けるようになることが、「稼ぐ人」の話し方に近づく第一歩です。