だが、「あわててはいけない」。

3社の100年企業を調べたところ、目先の数値に惑わされず、節々で必要な手を打っている。つまり開発投資や人的投資を怠らず、事業の盛衰を見越して「次の事業」を育てている。その繰り返しで、長く会社を繁栄させてきたのだ。

それはある程度の規模を持つ企業として当然の姿といえる。だが、そう感じていながら、私自身はこれまで短期の経営数字を気にしすぎていた。目を覚まさせてもらった思いである。

たとえば、採用、人材育成、工場設備の更新、事業ポートフォリオの組み替え。そうしたことは、景気のいかんにかかわらず、粛々とやっていかなければいけないことだ。川崎市に基礎研究所を新設し、100人単位の研究者を採用したことも、100年企業をつくるための投資だと胸を張っていいのである。

いまは四半期(3カ月)どころか、月次の業績で会社が評価される時代である。しかし、それはあくまでも「足の速い」投資家の都合にすぎない。経営者はもっと先を見据えて、少なくとも年単位、できれば5年、10年の単位で経営のかじ取りをするべきなのだ。

そこには「後継者へのバトンタッチ」という課題も含まれる。いまの日本電産は、創業者の私以外にはなかなかコントロールできない組織である。別の人が引き継いでも、同じように運営し成長させていける経営スタイルに変えなければならない。

日本電産の社長は、最低でも10年以上の長期政権を担ってほしい。社長としてふさわしいのは主力事業のリーダーだ。いまは創業以来のIT向けが事業の柱だが、やがて他の柱が伸びてくる。5年後なら家電・商業・産業向け、10年後は車載向けが主力事業だ。次の成長を引っ張るのは、こうした事業の出身者となるだろう。むろん、日本人でも外国人でもかまわない。

これから10年の経営環境について、もう少し詳しく見ていこう。