「腹をくくる」ことで
人生を充実させる

生島ヒロシ●いくしま・ひろし
1950年宮城県生まれ。TBSアナウンサーを経て89年独立。ファイナンシャルプランナー、ヘルスケアアドバイザー、防災士など多数の資格を持つ。みやぎ絆大使、みなと気仙沼大使としても活動。『この1冊で相続のことがまるごとわかる本』(大和書房)ほか著書多数。

これまで日本では、個人が老後のことをそう深く考えなくても、何とかなってきたという側面がありました。しかし社会状況も個人の生活も厳しさを増している今、将来も自分らしく生きていくためのライフプラン、マネープランづくりは、自己防衛策として欠かせません。

来年から施行される相続税の改正では、基礎控除額が縮小され、最高税率も上がります。自分が積み上げてきたものを、次の世代にいい形で伝えるには、一人一人が相続について知り、対策を考えることが大切です。

相続について考えることは、今後の人生を充実させるきっかけにもなると思います。日本では死について語るのを避けようとする傾向がありますが、人生のラストシーンを思うことで腹をくくり、家族について改めて考えることでその絆が深まるという側面は確かにある。僕は宮城県の気仙沼の出身ですが、3・11以降、明日という日は今日の延長ではないということを強く感じるようになりました。いつかは「いざ」という日が訪れるわけですから、いつその日が来てもいい。そんな気持ちで毎日を過ごしたいと考えています。ただ、それほど堅苦しく考える必要もなくて、自分の理想のラストシーンを思い描きながら、家族全員が幸せに暮らしていけるよう、財産の分け方を考える。僕自身、自分が積み上げてきたものを少しでも子供に残せるのは幸せなことだと思っていますし、喜んでもらえればうれしいですね。

相続や介護のことをオープンに語り合える家族関係を築いておくことも重要です。ターミナルケアをどうしたいかなども元気なうちに考えておいて、子供にしっかり伝えておく。すると、お互い心構えができると思うんです。こうした話をお子さんから切り出すのは気を遣いますから、親から話しておくべきだとは思いますが、お子さんからでも雑誌の記事や本、近所の話などをきっかけにして、実は不安に思っていることを上手に伝えることはできる。働き盛りの方は時間をとって集まるのも難しいかもしれませんが、ここは親子で向き合ってきちんと話し合っておく。それが、後の人生を悔いのないものにしてくれると思います。