スクールの校長は代々、生産技術部門のトップが務め、現在は後藤専務が校長を務める。研修生は国内外の工場長の推薦で選ばれ、今年の入校者は国内14人、海外8人の計22人。海外参加者はこれまで日本語が話せる人に限定していたが、今年度から英語の同時通訳をつけ、マレーシア、インドネシア、タイなど参加国も拡大した。

座学だけでなく、わざと爆発を起こす実験なども行う。

座学だけでなく、わざと爆発を起こす実験なども行う。

教育課程は目的に沿って、大きく「心の鍛錬=資質素養学(20日)」「技を磨く=基礎教育、専門教育(42日)」「心と技=ゼミナール活動(47日)」の3つからなる。とくにユニークなのは入校時から始まる心の鍛錬だ。座禅、茶道、倫理礼節、自己革新講座、成人教学、東洋古典など多彩なカリキュラムが組み込まれている。座禅は50分、毎月1回程度、計10回行う。また、成人教学研修では高野山の宿坊に4日間寝泊まりし、下座行と呼ぶ掃除をはじめ座禅や写経を行う。

リーダーの資質や人格形成を目的とする自己革新講座は外部講師により3日間実施される。最初は挨拶の仕方、椅子の引き方、立ち方から始まり「自分の考えを相手にどう伝えるのか。たとえばこれまで自分が生きてきた中で思い出に残っていることを題材に繰り返し教育し、柔軟な思考の大切さを学ぶ」(三田康志・生産技術部門教育グループ部長)。

一見、こうした心の修行と技術・技能の向上がどう結びつくのか、ましてや入社直後の真っ白な時期ならともかく15年以上の社員に効果があるのかという疑問も湧く。だが、後藤専務は、心は技に通じると指摘する。

「生産のスピリットは、変革への挑戦、継続へのこだわり、真面目さと基本の徹底の3つ。これを身につけるには心の部分は重要です。入社後10年から15年経過し、改めて自分がやってきたことをもう1回見つめ直す。礼儀や礼節を身につけることは技でいえば、型、作法、つまり定石を覚えることにつながります。それに、人や技術に対する畏敬の念や謙虚さがなければ、新しい技術など生まれてきません。そういう気持ちを養ううえでも心の鍛錬は大切なのです」

(藤井泰宏=撮影)