制約の中で格闘するのが面白い

富士重工業 スバル技術本部 材料研究部 材料研究第3課 担当 室井理恵さん

私は材料研究部に所属し、車の内装に使われる材料を研究開発しています。

車の中というのはご存知の通り、夏場に焼けるほど熱くなることもあれば、冬には凍るくらい寒い環境に置かれることもあります。何年も時間が経ってくると、太陽の光でシートやコックピット周りの樹脂が色褪せる可能性もあります。

6月に発売を控えたレヴォーグなどは特にそうですが、近年では内装が富士重工の社内でもとても重視され始めているんです。だから、私たちの部署も昔に比べて重要度が増しているのを感じます。高級感を抱かせる樹脂の質感とはどんなものか、触り心地をどう表現するか、汚れの目立ちにくいシート表皮、臭いをどう抑えるか――。一つひとつのテーマと格闘する毎日です。

この仕事の面白さや醍醐味は、限られた予算の制約の中でいかに「本物らしさ」を出せるか、を追求していくところにあると私は思っています。例えば、高級車のダッシュボードやコンソールを見ると、革が張ってあることが多いですよね。一方で大衆車の多くには樹脂が使われています。

内装に高級感を出すための最も簡単な方法は、コストを気にせずに良い材料を惜しみなく使うことです。でも、実際には制約があるので、革を使わずとも革に見えるような樹脂を開発したり、プラスティックを柔らかい触感に変えたりして、いかに高級に見えるかを工夫して追求していくわけです。そうすれば運転する方が肘を置くアームレストにも、コストの安いプラスティックを使うことができるようになる。「本物」に見せるためには、実際に近づけようとしている本物の素材をよく観察し、試行錯誤を繰り返しながら表現していく必要があります。