2014年4月18日(金)

ニートを信じ、女子高生をリスペクトするということ

“マネジメント”からの逃走 第1回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
若新 雄純 わかしん・ゆうじゅん
人材・組織開発プロデューサー/慶應義塾大学特任講師

若新 雄純福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。
若新ワールド
http://wakashin.com/

執筆記事一覧

若新雄純=文
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「教えてあげる」「助けてあげる」という勘違い

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教

福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。NEET株式会社代表取締役会長、鯖江市役所JK課プロデューサー。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。様々な企業の人材・組織コンサルティングやコミュニケーション開発を行う一方で、全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プログラムや広報プロジェクトを多数企画・実施中。
若新ワールド
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NEET株式会社
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鯖江市役所JK課
http://sabae-jk.jp/

僕たちが昨年11月に設立したNEET株式会社には、全国から300人以上の二ートの若者が集まり、最終的には166人が取締役に就任しました(NEET株式会社については、インタビュー記事 http://president.jp/articles/-/12263 を参照)。「怪しい」と言われ続けた前例のない取り組みに、これだけの若者を集めることができたのは、「これは自分たちのプロジェクトだ」と思ってもらえたからだと思います。そう思ってもらうには、いまのメインストリームである大人たちとの目線のズレを解消しなければなりません。そのためには彼らと対等、もしくはこちらが「学ばせてほしい」というくらいの関係をつくる必要がありました。

じつは会社設立にあたって、「ニートが取締役になる」というコンセプトを打ち出したとき、「いきなり経営者の肩書きだけを与えても無意味だ」とか、「ニートに何ができるんだ?」という上から目線の意見や批判がたくさんありました。世の中の多くの人たちは、「ニート」について、「会社や組織に適応できない人」=「能力が劣っている」「弱者」、さらには「よくわからない不気味な人たち」とひとくくりにして捉えてしまっているようです。なので、「ニート」と呼ばれる若者たちに対して、「君たちを助けてあげよう」「社会に戻してあげよう」「就労支援してあげよう」などという態度になりがちです。これが一番の大きなズレだと思います。なぜ社会や大人たちが「正しく」て、ニートと呼ばれる彼らは「間違っている」「劣っている」というのが前提なのでしょうか。

実際に彼らに会ってみると、高学歴の人や高度なスキルや特殊な能力をもった人、趣味がマニアックすぎる人、価値観の偏った人、極端にマイペースでユニークすぎる人など、とにかく多様な若者がいます。ニートとは、その言葉の定義どおり、会社に雇用された社会人や学生ではない、「その他」の人たちです。つまりはっきりしているのは、既存の組織や働き方の枠組みからはみ出した、現時点での少数派(マイノリティ)だということだけです。

成功した経営者や芸術家のなかには、「会社の、一社員だったらヒドイよね」と言われるような人も少なくありません。極端な話それと同じで、従業員になれなかった人が事業主になれないとは限りません。世の中の”一般”や”普通”といった多数派からはみ出すことは別に悪ではないし、それが必ずしも”劣っている”ということでもないのだと思います。むしろ社会の変わり目においては、得体の知れないところにおもしろさがある。彼らのような体制からはみ出したマイノリティこそが世の中を変えていく可能性があるというのは、過去の歴史を振り返っても明らかです。

今年4月、鯖江市役所に女子高生ばかりの「JK課」を設置した際にも、「未成年の女子高生たちに何ができるのか」と懐疑的な声がありました(鯖江市役所JK課については、インタビュー記事 http://president.jp/articles/-/12263 を参照)。「未成年だから無理だ」と決めつけるのは大人たちの目線と勘違いであり、それが新しい町づくりや行政改革を限界づけていると思います。普段からまちづくりなどに関わっていない「プロの素人」である未成年の彼女たちだからこそ、素朴な疑問や違和感を素直に投げかけることができる。そして従来の「整備する」というだけの役割を超えた、まちを楽しくおもしろくするためのさまざまなアイデアを出すことができるはずです。さらには、それまでの利害関係などに左右されず、地域のさまざまな人たちを巻き込んでいってくれます。

そんな可能性をもったニートの若者たちや女子高生たちと一緒に活動していくにあたり、僕は、この「目線のズレ」と硬直した関係性をリセットすることを何より大切にしてきました。

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