同社の依田平社長は、介護事業を運営してきたなかで、将来的に「介護」に繋がっていく場所の敷居を下げることの必要性を感じていた。参加型で高齢者自らが選べるサービスの提供がなければ、介護が必要になった高齢者に選ばれる事業者になれないという想いを強くもっていたのである。

G・マザーズカフェ月隈は、喫茶・レストラン部分の座席が40席、テラス席が13席あり、晴れた日には外でも食事ができる。教室、カラオケルーム、展示室のブースが用意され、新聞や雑誌が本棚に並んでいた。地域の人たちから本を寄贈してもらい書架も少しずつ充実している。

「外見は喫茶店ですが。中身はまるで違います。地域住民を巻き込んだ高齢者の生きがいを見つける場所として育てていきたいですね」と同社生活事業部の荻野龍哉さん。オープン間近の日常は毎日が新しいニーズの発見だと話してくれた。

カルチャー教室は、ハーモニカ教室、ピアノ教室、ストレッチヨガ、フラダンス、フラワーアレンジメント、カラオケ教室など20クラスを超える講座が運営されている。なかでも、韓流ドラマを字幕なしで見られるようになりたいという生徒が集まる韓国語講座に人気が集まっている。フラダンス教室では、食事に来ていた男性が、教室を見ているうちに参加するケースもあったそうだ。もちろん、カラオケの需要は高く、孫と一緒にやってくる高齢者もいる。講師募集や講座開講のノウハウは、企業秘密の段階であるが、生け花教室などははやらなくなっているそうだ。

「お茶を飲んで悩みを打ち明けて、みんなで話し合うような講座に人が集まっているのも、面白いですよね」と山神さん。1人で家に引きこもらない。ここに来れば、何かできることがある、という「場」が、高齢者にとって必要なことが明らかになった。

(和田久士=撮影)
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