例えば、長期休暇を利用した野外体験スクールなどは最適でしょう。親元を離れ、数日間、多くの子と寝食を共にする。自然の中で冒険をしたり、不自由な体験をしたり、参加した仲間同士でのトラブルあり、ケンカあり……。日常のぬるま湯を脱し、そんなちょっぴり手厳しい「社会」でもまれて、逞しくなって帰ってくる。かわいい子には旅をさせよ、と言いますが、まさにそれ。野外スクールは将来メシを食っていくうえでついて回る様々な「摩擦」を体験でき、人生の糧にできるのです。

また、他の学校の子や異学年の子が参加するそうしたイベントでは、ひょんなことから目立たない子が一躍ヒーローになることがあります。

あるとき、私どもが主催した野外スクールで星空観察をしたときのこと。1人の男の子だけが夜空を見上げ、引率者である私たちさえ判別できなかったある星座の名前を言い当てました。すると、翌日から、周囲からその子は「博士」のように扱われ、一目置かれるようになりました。

聞けば、その男の子は図鑑が大好きだけれどスポーツは得意ではない。ずっと「脇役」だったのです。でも、その夜の成功体験で人生が変わった。あまりパッとしなかった子が突然パカッと開花する。そんなことが親抜きのイベントではよく起こるのです。

子どもが自信を持つには、小さな成功体験の積み重ねが大切です。最初に一つの目標に向かって頑張る、それをクリアすることで次の課題を自らに設定させ、さらに次の目標に向かっていきます。子どもは親から離れた社会の中で認知されたと感じたとき、精神的に成長します。

ただ、そうした外部の力が有効とはいえ、子どもが何か「得意」を発見し、自信を得るには、母親の無条件の愛情が必須です。

父親は母親が悩んでいたら、愚痴を聞いたり相談に乗り、母親の心を受け止めましょう。その際、大事なのは傾聴の姿勢。結論の出ない「女子トーク」につき合う気概を持つことは、結果的にわが子を開花させる土壌づくりとなるのです。

花まる学習会代表 高濱正伸
東京大学大学院修士課程修了。1993年、小学校低学年向けの学習教室「花まる学習会」設立。『お母さんのための「男の子」の育て方』『夫は犬だと思えばいい。』など著書多数。
(構成=大塚常好 撮影=伊藤千晴)
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