老後を安心して送るには高齢者住宅、介護施設、在宅介護サービスをじっくり吟味し、自らが選ぶ時代を迎えている。

自立生活を目指す、老朽団地の再生

介護保険が利用できる住まいを提供することは、事業者にとって必要な使命である。しかし、利用者の側から見れば、健康なうちから介護サービス重視の住まいを選ぶわけにはいかない。現実は、在宅介護サービスの質とバリエーションがどのくらい担保されるかわからない状況を考えれば、自宅での介護の継続性は不確実であり、その先に介護型の施設が整備されることが望まれる。問題は、「介護が必要になったら介護を重視した施設と住宅」という選択肢しか用意されていないことである。

築54年の団地が生まれ変わった/東京・日野市の旧多摩平団地。団地再生で2棟を、スタッフが常勤して生活をサポートする高齢者専用賃貸住宅とコミュニティハウスの「ゆいま~る多摩平の森」に改修。エレベーターや集会室棟、小規模多機能居宅介護施設棟を増築。デイサービスを中心にショートステイや訪問介護を組み合わせた、地域密着の介護サービスも行う。

こうした状況のなかで、コミュニティネット・高橋英與社長は、介護型高齢者住宅全盛の時代に、「最後まで、自分らしく暮らす住まい」事業を、「ゆいま~る」シリーズとして全国展開している。そのひとつ、自立型の高齢者住宅「ゆいま~る多摩平の森」を訪ねた。

JR中央線豊田駅から徒歩9分。都心から40分ほどの距離にあるのに、この辺りまで来ると高層ビルがなく空が広い。

「たまむすびテラス」と呼ばれる敷地内には、54年前に建てられたUR(都市再生機構)の団地が5棟並んでいる。

これらの建物は、URが09年に募集した『ルネッサンス計画 住棟ルネッサンス事業』で、用途廃止した団地ストックの活用事業として定期借家方式で賃貸されている。3事業者が参加したプロジェクトは、5棟のうち2棟は学生たちが暮らすシェア・ハウスとして、1棟は菜園付きのスローライフを楽しむシニアハウスで、残りの2棟が高齢者向け住宅として改修された。

2棟の高齢者向け住宅は、エレベーターと外階段・廊下を新設し、各フロア4戸にエレベーター1基を割り当て、北側斜線規制の関係から1棟はエレベーターが3階までしか取り付けられていない。各居室はバリアフリーの約43平方メートルの広さがある。部屋は3種類あり、居室が2部屋に区切られたシェアルーム型、収納用の納戸付きのタイプ、独立キッチンの付いた1Kタイプがある。