意味のある日、
無駄な日が
あるのではない。
この一日、またこの一日、
毎日毎日が
高価なのである。
●ヤスパース『哲学入門』

ヤスパースは精神科医から哲学者に転じたドイツ人である。実存主義の代表的な哲学者で、『哲学入門』は彼がラジオで行った講演をもとに著された。

ナチス体制下のドイツで、ヤスパースは強制収容所に送られることになったユダヤ人の妻を庇って抵抗し続け、自宅に立てこもった。自殺寸前まで追い込まれたが、米軍が彼らの住む街を占領したことで難を逃れたという。ヤスパースが死と隣り合わせの極限的な体験をしていることを知ると、彼の言葉に一層重みを感じるのではないだろうか。

時間が足りない
のではない。
時間をみすみす
浪費しているから、
そう思うにすぎない。
●セネカ『人生の短さについて』

思ったような成果が得られないと無駄足を踏んだと考える現代人は多い。誰もが無駄のない時間を過ごして、効率よく生きようとする。しかし、意味がある日も、無駄な日もない。人生はわずかな一滴までも味わい尽くすべきであり、限られた生の中では日々は決して取り戻すことのできない高価なものなのだ。

カール・ヤスパース●1883~1969年。ドイツの精神科医・哲学者。ハイデッガーと並び称される実存主義の代表者の1人。主著は『精神病理学総論』。(Getty Images=写真)

今は誰も彼も忙しいと言いながら、その合間にもテレビを見たり、ゲームをしたり、ツイッターやフェイスブックをやっている。あるいは酒を飲んだりしている。時間がなくなるのは当然である。そして、時間をひねり出すために、便利な道具を使って効率を上げようとする。たとえばパソコンを導入して本当に仕事の効率は上がるのだろうか。むしろ無駄な手順ばかりが増えているという気がする。

時間を増やす努力をするより、時間を無駄にしない努力をするべきだと思う。しかし、私たちは自分のくだらない習慣やつまらないこだわり、不要な趣味や耽溺、密かな逃避にみすみす時間を浪費しているという自覚がない。経験的に言えば、時間が足りないのであれば集中するしかない。私の場合、瞑想で集中を高める。足を組まずに椅子に真っ直ぐに座って、何も考えずに呼吸だけに集中する。これを15~20分、1日に2回ぐらい続けていると、集中力が非常に高まってくる。