2014年4月11日(金)

シロエビ――4月解禁の可憐な「富山湾の宝石」

dancyu 2012年5月号

福地享子=文
【つくり方】
ビニール袋にシロエビと小麦粉を入れてふり、シロエビにまんべんなく粉がつくようにする。まんべんなく、がコツ。あとはから揚げして、そうめんに。それだけをつまむもよし、サラダのトッピングもよし。新湊市では、サラダ野菜と合わせたバーガーが名物だ。

富山湾名産御三家といえば、氷見で有名なブリ、神秘な光を放つホタルイカ。このふたつに後れをとったものの、ジワジワのしつつあるのが、シロエビだ。キャッチフレーズは「富山湾の宝石」。決してオーバーではなく、体長5~8センチ、真珠に珊瑚の淡いオレンジ色をぼかしたような色調の、それは可憐な小エビである。日本全国で、その姿は見られる、というものの、市場ベースにのっかる量がとれるのは富山湾だけ。自慢したくもなるわいな。

その理由は富山湾の特異な地形。以前、富山湾でちっこい船に乗せてもらったとき、沖へ出てものの数分しないうち、「ここらで、水深は300メートルほど」と聞いて、ゾクゾクッ。転覆したら。私、泳げないんだよぉ。とまぁ、富山湾というのは、陸からいきなり深く深く落ち込んでいるのだ。そこに、庄川、神通川、常願寺川などの大河が流れ込み、プランクトンが豊富。シロエビは深海の冷水を好むし、餌も豊富とあっては、そりゃもう心地いい住処なのである。

解禁は4月。晩秋まで小型底引き船による漁は続いており、その間、築地市場にも入荷しているが、店頭で目につくのは、やはり新漁のころ。以前はむき身だけだったが、生の殻つきが近年デビュー。プラスチックの薄型トレイにならんだ姿はまさに「海の宝石」、乙女心(未だあるつもり)をゆすってくれる。

むき身は、すしの軍艦巻きによく使うが、お値段も高く、高級すし店行きだ。殻つきは、1トレイ200グラム1000円ほどで、使い勝手がよく、和洋問わずの人気。サクラエビもシーズンなので、紅白で競演させる、という店もある。

本場では、シロエビをどのように使っているのか、有楽町にある富山県のアンテナショップをリサーチしてみた。シロエビ入りせんべい、冷凍のかき揚げ、むき身を使った押しずし、むき身の昆布締め。その数20種近く、さすがである。でもなぁ、家庭では、なんといっても殻つきのから揚げ、かき揚げだろう。煮たり、炒めてみたが、どうも殻が口のなかでモソッとする。揚げると、殻はカリッとなり、エビ特有の甘味も堪能できるのだ。

ところで、シロエビという名前。真珠のように白いから、と思い込んでいた。でも、標準和名はシラエビ。富山県新湊市あたりのお年寄りは「ヒラタエビ」と呼んでいるとか。実はシロエビ、身がちょっと平べったい。それでヒラタエビ、なまってシラエビ。でも、富山県のアンテナショップでも、商品化したものの名はすべてシロエビなんとか。シラエビでは、やっぱロマンに欠けるということだろう。だって、海の宝石なんだもん。

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福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。