2014年4月4日(金)

新タマネギ――秋に種を蒔き春に収穫する、みずみずしい早熟タイプ

dancyu 2012年5月号

福地享子=文
【つくり方】
皮をむいた新タマネギに、牛乳で溶いた小麦粉の衣をつける。目の細かいパン粉をまぶし、お結びを握る要領で、パン粉をしっかりつける。あとは中温の油で、衣がきつね色になるまでゆっくりと揚げる。

もう新タマネギ、食べました? 地味ながら、新タマネギも春を告げる野菜。でも、フシギ。なんで春だけなんだろ。

そもそもタマネギは基本の野菜、周年途切れることのないように生産されている。それなら、あの肉厚、ジューシー、お肌パッツンと、青春まっさかりみたいな新タマネギも、いつだってあってよさそうなんだけど。

人間と同じで、青春時代なんていっときさ、ですませてもいいけど、そうはいかんのがこのページ。ちょっと理由を解きあかすと……。タマネギは、春に種を蒔いて秋以降に収穫、秋に種を蒔いて翌年の春以降に収穫するものに大別できる。春蒔きの産地は北海道など北が主力で、新タマネギづくりに気候的に合わないらしい。秋蒔きのうち極早生や早生、つまり早熟タイプが新タマネギに。要するに彼らは、乾燥して保存するのには向かないのだ。

秋蒔きは、関東以西がさかん。築地では、静岡県や茨城県など近県からの出荷もさかんだが、九州からも多い。量的には佐賀県だが、青果部新タマネギ担当のおすすめは、6月まで出荷予定の熊本県水俣、芦北地方産の“サラたまちゃん”。

「生食にしても水でさらす必要はまったくなし。そのくらい辛味が少なくて甘い。醤油を、ちょっとかけただけで、なんか特別なものかけたんじゃないかと思うほどうまい」と、かなりな惚れ込みようだ。

実際に、温暖な気候や不知火海の潮風、といった自然環境、さらに土づくりや肥料などの栽培法も、県のガイドラインをクリアしたエリート君なのである。

さてそんなエリート君も、そうじゃない子も、食べるとなると、やっぱりスライスオニオン、なのかなぁ。いや、もっとなにか……。画期的な。なんというかクリエイティブなさ。白状すれば、生のタマネギが苦手なんである。

1週間、新タマネギ漬けとなり、夫の堪忍袋の緒が切れつつあるおり、フイッと思いついたのが電子レンジ。丸ごとをカフェオレボウルに入れ、ラップかぶせて5分ばかし。それだけ。白い肌に湯気がフワリで、かなりシュールなできあがりとなった。ちょっと醤油をタラリ。まずは汁をすする。甘い。したたる禁断の木の実もかくや、の甘さなのである。もちろん身? のほうも、新タマネギ特有の甘さと香りがそこはか、である。

しかし、やっぱ汁が逃げちゃいかん。汁をとじこめたままでなにか。そんな野心に突き動かされてやったのが、丸ごとフライ。なにせお肌パッツンゆえに、衣をつけるのに往生したけど。自分としちゃ、フフフの会心作? 熱々にウスターソースをどっぷりかけて、お試しあれ。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。