【岩瀬】私なら将来性を軸にします。いま輝いている会社ではなく、20年後に輝く会社を選ぶこと。いま外見だけで美人やイケメンを選ぶより、20年後におじさんやおばさんになったときに輝いている人と結婚したほうが人生は楽しいじゃないですか。いまの給与や人気にとらわれず、先を見据えて選ぶべきです。

具体的には、大企業より自分と一緒に成長できるベンチャーがいいですね。大企業には大企業なりのメリットがありますが、いろいろな経験を積めて成長できる点ではベンチャーに軍配が上がります。

【村上】19歳で起業してからの6年間で経験してきたものを大企業で経験できるかと言われると、確かに難しいかもしれません。経営はもちろん、テレアポ(電話勧誘)も、普通は外部の業者に任せるSEO(検索エンジン最適化)対策も片っ端から専門書を読んで自前でやりました。お金がないから仕方なく自分たちでやったのですが、結果的にはそれらの経験が自分や会社にプラスになりました。

【岩瀬】じつは大企業の中にも積極的に経験を積ませてくれる会社がないわけではありません。判断基準の一つになるのは、トップの年齢です。社長が若い会社は、年功序列に縛られずに実力ある人を抜擢します。たとえばリクルートは社長が40代。そういう会社なら若手でもベンチャー並みの経験を積みやすいでしょう。

幸せは、自分の内に見出すもの

――お二人が、目標とする人物やメンターはいますか?
『リブセンス』
25歳の史上最年少上場社長はどうやって誕生したのか。常に平常心を保ち、謙虚な姿勢を崩さない若手社長の生い立ちから現在までがわかる。

【村上】特定のメンターはいないですが、あえていえば、イーロン・マスクでしょうか。彼はインターネット決済システムを提供するPayPal社の前身であるX.comを立ち上げたり、宇宙ロケットを開発するスペースXを設立したり、電気自動車のテスラモーターズに出資してCEOになっていたりします。次々と新たな事業をつくり出していく姿が格好いい。そういう視点なので、人よりも事業モデルに興味があります。たとえばザッカーバーグより、フェイスブックはすごいなという感覚ですね。岩瀬さんには、誰か目標としている人がいるのですか。

【岩瀬】最近は二足のわらじで活躍している経営者の方に密かに憧れています。たとえばセゾングループのトップで、作家・辻井喬としても活躍する堤清二さんや東京都写真美術館の館長も兼務していた資生堂の福原義春さんも、素敵ですよね。経営と芸術・文化は違うものだと思われがちですが、クロスオーバーすることで新しいものが生まれてくるはずです。先日、財界の文芸誌の会合に参加させてもらったのですが、本当にいい刺激になりました。僕らの会社は成長途上なので本業に取り組むことが最優先ですが、そういう意識は忘れないでいたいです。