先行者を真似てスピード&スケールで挑んでくる韓国勢、台湾勢にソニーをはじめ日本のエレクトロニクスメーカーが討ち死に寸前にまで追い込まれているのは、デジタル化の必然だったともいえる。

ソニーの経営の系譜からいえば、出井伸之氏やハワード・ストリンガー氏の時代から迷走が始まったように思う。出井社長の頃からハードよりもソフトとネットワーク、モノづくりよりコンテンツ重視の方向性が打ち出されて、ストリンガー時代にはさらにエンターテインメント路線へと舵を切った。

それらの事業はどうなったか。いずれも持続する収益の柱になっていない。その間に必死にデジタルエレクトロニクスをやっていたのがサムスン電子である。サムスン電子の13年の売上高は約22兆3000億円、営業利益は約3兆6000億円。ソニーが同じ立場でデジタルエレクトロニクスに死力を尽くしていたら、サムスン電子に負けてはいなかっただろう。

ソニーにはそういう選択肢もあったはずだが、要はソフトだ、ネットだ、システムだ、エンタメだと手を広げてしまったのだ。その間にハードの人材は粛清されて、ソニーのモノづくりの魂はすっかり抜けてしまった。

在任中にソニーの時価総額を2兆円も減らした(高給取りの)ストリンガー氏は退任し、12年に後を継いだのが平井一夫社長兼CEOである。しかし、平井社長も系譜的には出井、ストリンガーと同じで、SMEやSCEを経験しただけでソニーの伝統的な研究開発やモノづくりのルーツを全く持っていない。