2014年3月28日(金)

美しすぎる。デパチカの「お花見弁当」

プレジデントFamily 2014年5月号

山田清機=文 伊勢丹新宿本店=取材協力 干川 修=撮影

「吉兆」料理長の手作りが5,250円 ※

東京吉兆・正月屋吉兆(伊勢丹新宿本店)の「観桜(かんざくら)弁当」

お弁当に5,000円! と驚かれるかもしれない。でも、老舗の本物の味を、しかも料理長が自ら作ったものを、この値段で食べられるとしたら、考えようによってはかなりお得なことかもしれない。

吉が兆すという、いかにもおめでたい店名が黒々と書かれた蓋をぱっと取ると、思わず、「わーっ」と声を上げたくなる。

最高級料亭、東京吉兆・正月屋吉兆(伊勢丹新宿本店)がつくる「観桜(かんざくら)弁当」は、一つひとつの食材が放つ彩りが鮮やか。そして、お弁当全体に桜吹雪を模した錦糸卵の花びらを散らした眺めは、華やか。まるで、芽吹きの季節を描いた点描画のようである。

吉兆の始祖といえば、松花堂弁当の考案者として知られる湯木貞一。それだけに、正月屋吉兆が観桜弁当にかける情熱は濃く、かつ深い。

現在の観桜弁当の原型が作られたのは、いまを遡ること6~7年前のこと。現料理長の丸山芳紀さんが、前任の料理長のレシピに敬意を払いつつ毎年マイナーチェンジを加えていき、わずか半月のお花見の季節だけで500個以上を売り上げる人気商品に育て上げた。

少しずつ内容を変えてきたのは、毎年必ず購入するファンがいるから。丸山さんが言う。

「毎年、変えるといっても、決して流行を追うようなことはしません。奇を衒(てら)った料理は出さないのが吉兆の伝統。それをきっちり踏まえながら、ほんの少し遊びを入れていくのです」

観桜弁当の特徴は、見た目の華やかさもさることながら、おかずの構成にある。先付、八寸、焼物、お造り、焚合(たきあわせ)、ご飯、デザートと、懐石料理をそのままお弁当箱に盛り込んだ形になっている。

「お持ち帰りいただいて、そのままお皿に移してもらえれば、懐石料理のコースとして召し上がっていただけます」

まさに「箱の中のミニ懐石コース」なのだ。

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山田 清機

1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経てノンフィクションライターとして独立。著書に『中国ビジネスは俺にまかせろ上海の鉄人28号 古林恒雄』『青春支援企業』など。