ビッグデータのダイナミズムが活きる瀬戸内国際芸術祭

膨大な位置情報の履歴を使った調査は、昨年の瀬戸内国際芸術祭において行われた。2010年に初めて開催された瀬戸内国際芸術祭は、3年に一度行われる現代アートの祭典。瀬戸内海の島々を舞台に、島の自然・文化と融合したアートが展示される。

第2回となった昨年は、春・夏・秋の3会期、合計108日間の開催。第1回の約94万人を上回る約107万人が足を運んだ。

「位置情報のビッグデータは、広域で多種多様な所から人が集まる場合にこそ、分析のダイナミズムが活きてきます。島々を周遊しながらアートを見る瀬戸内国際芸術祭のスタイルは、まさに『人の動き』がポイント。この芸術祭は、3年に一度の開催ですから、環境が大きく変わった時にどのような動きが生まれるかを知ることも大切です。そういった理由から、位置情報のビッグデータ解析が行われました」(同)

調査ではユーザーの同意のもとで収集しているスマートフォンの位置情報履歴と、年齢・性別などの属性情報を掛け合わせて、来訪者の「動き」を調査した。昨年3月21日~5月12日までに島を来訪したサンプルを740名抽出。島来訪者の独自性を浮き立たせるため、島以外の香川県を訪れた県来訪者12588名のデータも抽出した。芸術祭に訪れた人々が島々をどのように周遊しているか、さらには島以外の香川県をどのように観光しているかなどを、より具体的に調べようという試みだった。

抽出されたデータから位置情報と属性を分析してみると、県来訪者に比べ島来訪者は女性が多く、年代も20~39歳と若い層が多いことが分かった。また、来訪者の普段の居住エリアを見ると、島来訪者は近畿や関東などの遠方の都市部が多く、県来訪者の3割以上が四国の居住者だったことと比べて、明確な違いが出てきた。女性誌やマスメディアなどでのプロモーションの結果、瀬戸内国際芸術祭が若い女性の興味を惹き、遠方から人々が足を運ぶ動機になっている事がみてとれる。