実際に中国のパネルメーカーの生産現場を見たことのある関係者は、「同じラインでできたパネルに自社と日本メーカーのシールを張り替えて出荷しているのを目にして驚いた」と明かす。そうしたこともあって、ウエストエネルギーソリューションの恩田も「性能、サービスや保証内容などを検討しながら、そのときにベストなパネルを選ぶようにしている」という。アドバンスが採用しているのも韓国のハンファQセルズのパネルだ。

しかし、こうした現実に目が向かないのか、いまだに日本神話にしがみついているのが一部の銀行だ。メガソーラー事業に対する融資の条件として、国産パネルの使用を加えることがある。性能もさることながら、世界シェア首位になったこともあるドイツのQセルズが12年4月に倒産しており(後にハンファが買収)、その二の舞いを恐れているようだ。しかし、同じリスクは国内メーカーも常に抱えているはずである。

そこで目崎がパネルを選択する際のポイントにしているのが「ミュンヘン再保険」への加入の有無だ。聞き慣れない名前だが、同保険は世界最大の再保険会社で、世界各国の大手損害保険会社のリスクを引き受けている。そのなかで09年から太陽光パネルの性能保証保険を開始した。「巨大なリコールが起きて大量の交換が必要になったときに、査定に基づいて保険金をパネルメーカーに支払うものだ」と同保険の松田道郎はいう。

ただし、その加入の条件が厳しい。ラインごとに出来上がったパネルの性能のバラツキをチェックするのはもちろんのこと、品質管理や工員のレベルまで徹底的に審査したうえで、加入を認めるかどうかを判断している。「一つひとつロットナンバーの単位でパネルの性能を審査・管理しているミュンヘン再保険に加入できているかどうかは、最高のクオリティチェックになる」と目崎は話す。

ちなみにインリー・グリーンエナジーは12年10月に性能保証保険に加入しているが、通常1~2年かかる審査を半年でクリアし、その性能の高さを実証した。国内メーカーでは唯一ソーラーフロンティアが11年7月に加入したことを発表している。しかし、両社は現在も継続しているかを明らかにしていない。

そのミュンヘン再保険だが、パネルメーカーが倒産した際のリスクに備える保険を12年夏からスタートさせた。パネルの故障など通常ならメーカーによって補償されるべき損失が、メーカーの倒産などによってカバーされなかった場合に補償を提供するものだ。こうした保険の存在を知ったうえでもなお、国産パネルに固執するのなら、ガラパゴス化もここに極まれりといわざるをえないだろう。