唐突な現実に直面し、まずやったこととは

超高齢化社会を迎えた今、介護は社会問題のひとつとなり新聞や雑誌などで取り上げられることも少なくありません。そうした記事を読み、自分が介護をする立場になった時のことを思い巡らせている方もいるでしょう。しかし、親が元気なうちは、やはり他人事。どう対処するかを具体的に考え、その時に備えている人は少ないのではないでしょうか。

私もそのひとりで、唐突に直面した現実に慌て混乱しました。この事態を誰に相談したらいいのか、介護保険利用に必要な介護度の認定や介護サービスの手続きのことなど、さまざまなことが頭をよぎりましたが、それよりも前に目の前にいる父親が求めていることに対応しなければなりません。

私はドラッグストアに紙パンツを買いに走りました。下の始末をするためです。父は黙っていましたが、匂いでそれを察しました。

「ついにこの時が来たか」と思いました。

が、覚悟を決めるといった大袈裟なものではなく、「するのは当然」という気持ちでした。その手順も考え、ウェットティッシュを厚手にしたお尻拭きも購入しました。

紙オムツではなく、紙パンツにしたのは、排尿障害の気がある父が以前から使っていたこと、いきなり紙オムツでは父に抵抗感があると思ったからです。

しかし、いざ紙パンツを持ってベッドの横に立つと、何をどう始めていいかわかりません。固まった状態の私を見た父が「病院の看護婦さんはこうしてくれた」と言ったのでそれに従うことにしました。

まず、かけ布団を取り、腰を浮かせてパジャマのズボンを脱がせます。次に体をこちら側に向ける。紙パンツのサイドが手で引きちぎれるようになっており、そこを切ります。そして寝返りを打つ要領で体を向こう側に向け、反対側のサイドを引きちぎる。

現れたお尻をトイレットペーパーとお尻拭きで拭き、紙パンツを外してゴミ袋に捨てる。体を仰向けにして新しい紙パンツとパジャマをはかせ布団をかけて終了、という手順です。