企業参入を呼び込む新事業「農地バンク」

【弘兼】新浪さんは産業競争力会議で農地の集約化を進め、経営力のある担い手が利用すべきだと提言しました。農業の販売額が100万円以下だという農家が半数以上、逆に1000万円以上の農家は8%程度という数字があります。そしてこの8%の農家が全体の60%を生産している。農業を主たる収入源としていない兼業農家が日本のほとんどの農地を所有しています。

【新浪】後継者がいないため、放置された農地もかなりあります。農業はある程度のまとまった耕地面積がないと競争力がつきません。今回、私が提言したのは、農家から農地を借りて、農業法人や企業などに貸す組織を利用すること。この組織は「農地中間管理機構(農地バンク)」と呼ばれています。

これまでは農地の貸し借りについて各市町村の「農業委員会」を通さなければいけなかった。しかし、農業委員会の職員は平均1.5人。各自治体から派遣を受けているだけなので、利害調節ができず、機能していなかった。荒れ地でさえ貸し借りができませんでした。今回は都道府県が直轄して、農業委員会ではなく“公”としてきちんとやる。売るのではなく、あくまでもきちんと整地して、貸し出します。

【弘兼】戦後、GHQが農地改革を行いました。あのときは大規模農家を解体して、小作農に農地を解放した。いわば今回はその逆ですね。

【新浪】今回、農地取得への規制緩和が進まなかったことには批判も受けました。なぜ批判を受けるのか。ローソンでも全国10カ所で農業をやっていますが、農地を買おうとは思いません。企業が農地を保有すると資本効率が低くなる。だからリースで十分。農地の売買を自由化すべきとの主張にはくみしません。一方で、農家と企業がつくる「農業生産法人」の仕組みは変えるべきです。法律で農業関係者以外からの出資を議決権の4分の1以下に制限しており、役員の半数以上が年150日以上、農業に従事することを求めている。これは「企業は農業をやってくれるな」という趣旨に近い。

【弘兼】農家は、耕作放棄していた農地から賃貸収入が得られるわけですね。

【新浪】もちろんどんな農地でもいいわけではありません。どの土地を集約するか、管理は各自治体にまかせます。機能していない自治体の予算はどんどん減らされる仕組みです。

【弘兼】首長の管理能力が問われますね。

【新浪】時代は中央集権より地方分権です。これも産業競争力会議で提案したのですが、市町村の単位で「輸出特区」をつくっていきたい。海外での販売に成功した事例が出てくれば、他の自治体も独自のやり方を考えるようになる。そもそも全国一律は無理なんです。