ジョン・F・ケネディ(amanaimages=写真) 
食卓で何を話すかで思考力が向上。

アメリカの名門、ケネディ家。第35代大統領のジョン・F・ケネディ(1917~63)、弟で司法長官になったロバート、そして上院議員のエドワード。最近では、駐日大使として赴任したジョンの長女であるキャロラインと、きら星のごとく政治家がならぶ。

彼らの母親、ローズは4男5女の子育てに臨んで、確固たる考え方があった。彼女は子育ての記録を『わが子ケネディ』(大前正臣訳)という本にまとめているが、これを読むと、いかに彼女が周到な準備のもとに子育てに臨んだかがよくわかる。

「子供たちを優れた人間に成長させるためには、小さいときから始めねばならない。子供はたとえば10代になってから突然、すばらしい会話者とか話し手に開花することはないし、頭の回転の速さ、感情のバランス、幅広い知識を獲得することもできない。それは遅くとも4歳か5、6歳のときに準備と努力をはじめなければ、14歳か15、6歳になって、たまたま出てくるものではない」

とはいえ、夫は多忙な実業家で、彼女自身も子育てや家事に追われていて、子供たちとゆっくり話をする時間はあまりなかった。そこで彼女が目をつけたのが、家族全員が集まる食事の時間である。

彼女はこんな工夫をした。子供たちが食堂に集まる途中のかならず目につきそうな場所に掲示板を置き、新聞や雑誌の切り抜きを張っておく。字が読め、理屈を考えられる年齢に達した子供がそれを読んで、食事のときの話題にすることができるようにするためだった。

もちろんそれは子供たちの自発的な会話ではあったが、母親が質問をしたり論評するなど巧みにリードし、教訓を導き出す。ローズは「けっしてポイントのない雑談に終わらせるつもりはなかった」と言っている。

例えば、フロリダ州が話題に出ると、フロリダとはどういう意味で、なぜこんな地名になったのかと質問する。「これは何語かしら」「この州にあるスペイン語の名前の町を考えてごらん」「カリフォルニア州はどうかしら」といったぐあいだ。一種の“教育ゲーム”である。子供たちは大いに興味を示し、知らず知らずのうちにアメリカ史を学ぶことになる。

こういったことを食事のたびに経験すれば、思考力や会話力が身につくのは間違いないだろう。1960年の大統領選挙では、候補者となったケネディとニクソンのテレビ討論が勝敗の行方を決めたといわれる。そのテレビ中継を見て、母親のローズは、子供時代の元気のよい議論の習慣が役立ったと思ったという。

木原武一
1941年東京生まれ。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。著書に『天才の勉強術』『大人のための偉人伝(正・続)』『父親の研究』『あの偉人たちを育てた子供時代の習慣』『子供を知的に育てる親の態度』。
(岡村繁雄=構成 amanaimages=写真)
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