2014年3月14日(金)

フルーツトマト――栄養を蓄える春がピーク。もはやデザート!?

dancyu 2012年4月号

福地享子=文
【つくり方】
フルーツトマトは皮を湯むきする。練り胡麻、味噌、砂糖で、甘さの勝った胡麻味噌をつくり、フルーツトマトに添えてガブリ丸かじり。トマト担当の競り人さんに、「味噌が合う」と教えてもらったのがヒント。

フルーツトマトの旬は、なにやら早い。やっちゃ場でのピークは3月。4月には見飽きた、となり、5月に入ると店頭にならぶ量もガクンと減る。トマトったら夏でしょ。いくらなんでも早すぎる。

「夏だと、ただのトマトになってしまう」

そう教えてくれたのは、やっちゃ場の野菜師匠、政義さんだった。

「フルーツトマトといっても、それ用の品種があるわけじゃないんです。要は育て方。暖かい時季に野放図に育ってちゃ、フルーツトマトにならないんです」

フルーツトマトの育て方で、よく言われるのは、野菜にとって主食の水を極力ひかえること。生命力の強いトマトはそれでも実をつける。そして、種の保存のため、実に集中的に栄養を蓄えようとする。それが甘さにつながる、と。

実は温度もポイントなんだそう。寒暖差の大きさも大切で、それには、冬のハウスでそうした環境をつくってあげるのがたしかな方法。だから、春がピークとなるのである。

元祖フルーツトマトといわれているのは高知市徳谷地区産のそれ。鮮烈なデビューだった。お洒落な西麻布のイタリアレストランで、生のままカッペリーニに添えられて。フルーツのような甘さに、だれもが驚愕したものだった。

あれから20数年。普通のトマトの糖度4~5度に対し、8度以上のものをフルーツトマトと、今では総称している。産地は広がり、高知県に加え、群馬県、栃木県なども主産地に。プリマベーラ、ブリックスなどネーミングにこだわるのも特徴で、2011年は、甘さが売りなのに“塩トマト”と名づけた熊本県の八代干拓地で生まれたものが大ヒットした。やっちゃ場での一押しは、茨城県筑西(ちくせい)市産の、その名もスーパーフルーツトマト。ピンポン玉大が通常のフルーツトマトのなかでは、群を抜く大きさが自慢。夏には赤ん坊の頭ほどになる品種を、フルーツトマト育成の方程式で育てた成果だ。

あのカッペリーニとの組み合わせにショックを受けて以来、私もフルーツトマトの大ファンだ。加熱調理してもおいしいけれど、やはり生食が多い。冷たいパスタ、サラダ。そのうちに蜂蜜でマリネしてヨーグルトで和えたり。今、凝っているのは、甘い胡麻味噌だれを添えたもの。なんとなくデザートへ傾きつつあるのは、やはりあの持ち味からだろう。

その昔のアメリカで、トマトは野菜か果物か、という一大論争が巻き起こった。ついには、最高裁判所での審議となり、野菜とする判決がくだった。理由のひとつは「デザートにはならないから」。裁判官殿に、フルーツトマトを食べてもらいたいものだ。

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福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。