森永乳業リテール事業部ヨーグルトマーケティンググループ長 
齋藤千文

研究の結果、ノロウイルスを予防する働きを発見。ノロウイルスは腸の表面の細胞に入り込み、水分や塩分を調節する機能を破壊するが、ラクトフェリンを摂取すると、これが腸の表面に張り付いて、細胞をノロウイルスからガードする。さらに胃の中で変化してできる「ラクトフェリシン」という物質がノロウイルスにくっついて、腸の表面の細胞への侵入を阻害するという2つの働きが認められたのである。

多くのメーカーが長い年月をかけた研究の成果が結実し、ここ数年で機能性ヨーグルトの数は一気に増大した。

機能性ヨーグルトの競争は激化するばかりだが、「それを歓迎しています」と言うのは、森永乳業ヨーグルトマーケティンググループ長の齋藤千文氏。

「各社とも乳酸菌やラクトフェリンの研究に注力していますが、その競争は価格競争とは違って市場を盛り上げる方向へ働くはず。競争に呑み込まれないように、当社が保有する素材をどうプロモートして一歩抜け出るかということを常に考えています」

その言葉通り、機能性ヨーグルトは小売店で安売りされることがほとんどない。にもかかわらず、値段に敏感な主婦が、安売りされていないひとつの商品を大量にかごに入れている姿がよく見られる。機能性ヨーグルトを買う消費者は、価格よりもその“機能”で商品を選び、「指名買い」をしているのだ。今後もしばらくは、各社共存共栄の状況が続くであろう。

機能性ヨーグルトに牽引されたように、従来のヨーグルトの消費量も増えている。森永乳業の調査によれば、2012年から1年間でヨーグルトを「食べる量が増えた」と答えた人が31%。うち86%の人がその原因を「食べる頻度が増えた」ためと答えた。消費者はこれまでのように、デザートとして食べているだけではないようだ。メーカーも、ヨーグルトを料理に使ったり、チーズのように酒のつまみにしたりと、食べ方の工夫や食べるシーンの提案に力を入れている。そうして従来のヨーグルトの消費量も上がっていけば、ヨーグルト市場はまだまだ拡大していくに違いない。