長男誕生で変わった40代エース社員の働き方

経営管理本部アソシエートディレクターの鷲田淳一さんは、12年10月の長男誕生をきっかけに、週1回の在宅勤務を始めた。鷲田さんももともと「ロケーションフリー」の働き方には馴染みが深い。09年まで内部監査担当として世界中の拠点の監査をしていたときは、「1年の半分から3分の1は海外出張で、部下の6~7人はフィリピンのマニラ、もう半分はヨーロッパにいる組織を管理する」という経験を持つ。

そして現在は、国内の営業本部と数字目標を共有し、得意先ごとの利益を最大化するために、売り上げ目標を設定し、その進捗を管理したり、販売促進費の調整を行う部署のリーダー的役割を担う。重責あるポジションで、ご本人も「仕事人間」を標榜するが、週1日とはいえ在宅勤務を選択することに抵抗はなかったのだろうか?

「待望の子どもだったので、子育てを妻任せにするのではなく、自分自身、深く関わりたい気持ちがありました。また、もともと、ダイバーシティを啓蒙するための社内セミナーを行うなどの活動をしてきたため、実際に私が在宅勤務制度を活用すれば、ほかの社員も利用しやすくなるのではないかという思いもありました」

日本企業でも、いわゆるイクメンが増え、男性社員の育休取得率は上がりつつあるが、実際に取得するのは家庭重視派で出世を諦めた人が主体だったり、あるいは取った瞬間に、「非出世宣言」と受け取られがちだ。だが、鷲田さんのようなエース社員が在宅勤務を取得すれば、仕事と育児を両立させたい男性社員に「両立は可能だ」というメッセージを発信することができる。実際、鷲田さんは週1度の在宅勤務中も、先の電話会議システムなどを駆使して仕事の不都合は感じないし、かえって仕事の効率が上がったと自負する。

「以前は、大きな仕事があるときは、その直前に深夜までかかってでもやればいいという意識がありました。でも子育てと両立する今は、1週間先、2週間先のスケジュールを俯瞰して見るようになり、前倒しで仕事するようになりました。また、在宅勤務をすることで『結果を出す』ことに対して、より敏感になりましたね」

バリバリ働いて結果を出す“バリイクメン”である。奥さんも、今では鷲田さんの在宅勤務日を心待ちにしているそうだ。

「僕がその日は家にいることで、いざ子どもが病気したときでも、小児科に連れていってもらえると妻の安心につながっているようです」

家庭が円満だから、私事に心配事がなく、仕事に集中できる。会社はこんな柔軟な働き方を許してくれると実感することで、忠誠心もモチベーションも上がる――鷲田さんは、今、そんな幸福のサイクルにいるようだ。