「相続」を「争族」に
しないために

──制度が大きく変化するなかで、頼りになる専門家を探すポイントは?

【木村】まず基本的なことですが、相続の案件を多く扱っている人に相談するのがベターでしょう。手がける案件が多ければ、ノウハウもそれだけ多く集まります。

2つ目は説明が丁寧なことです。当然ながら税制に関する法律には多くの専門用語が登場しますので、一般の方が読んだり聞いたりしても、なかなか理解できません。また各種の特例などについても、「なぜ、そのような措置が取られているのか」まで分かりやすく話してくれる人を選ぶといいと思います。

3つ目は、納税資金をどうするかまで考えてくれること。相続は納税ができてはじめて終了します。2006年の法改正で物納の条件が非常に厳しくなり、現金で優先的に納めなければいけなくなりました。土地は相続を契機に売る場合は足下を見られがちですし、相続税の支払いで生活が破綻する人もいる。事前に納税額を把握し、ある程度の現金を準備しておく必要があります。

──相続をスムーズに進める上で、ほかに心構えのようなものはありますか。

【木村】相続を受ける方には、相続財産はご両親がつくり上げた財産で、ご自身のつくった財産ではないということをまず理解してほしいと思います。あとは感情的にならないこと。感情が先立てばまとまる話もまとまらず、時間的・経済的・精神的なロスは大変なものになる。納税が遅れれば利子税もかかり、結局どちらの利益にもなりません。

一方、財産を残す方は、その行く先を事前にしっかり決めておくべきでしょう。極端な配分は争いの元ですから、法定相続をベースに、両親の面倒を見たり家業を継いだりといった貢献の度合いで調整を加え、それを遺言に残す。遺言がないと「面倒を見てくれた同居の長男に財産を多く残す」と他の兄弟に口頭で説明し、納得もしてもらっていたのに、相続でもめるというケースは本当に多いのです。そうならないよう事前に手を打っておくのは、いわば親の務め。遺言の書き直しはいくらでもできますから、元気なうちにできるだけ早く準備しておいたほうがいいと思います。