税制を理解、活用して
賢く節税を

──納税額は節税を意識するか否かで大きく変わってくるといわれます。

【木村】節税対策には、「相続財産を減らす」「評価額を下げる」「特例や非課税枠を利用する」の大きく3つがあります。

持ち家のある方にまず考えてほしいのが、特定居住用の小規模宅地等の減額の特例です。親と同居する子が自宅を相続する際、敷地面積が240平方メートルまでなら、その土地の評価額を8割減と大幅に減額してもらえる。来年1月からは上限面積も拡大されます。この特例は親が介護施設に入居している場合も適用可能で、適用条件も本年1月からさらに緩和されました※1

お子さんなどに贈与として財産を移し、相続財産をあらかじめ減らしておく方法もよく使われます。贈与税の税率は相続税より高いのですが、やはり特例や非課税枠があります。政府は日本人の資産全体の6割以上を占める高齢者の資産を若い世代へ移したいと考えており、そのための税制整備が進められているのです。ただ贈与する側は、将来的に必要なお金を手元に残しておくべきでしょう。

──相続税対策としてマンションやアパートを建てるという話も聞きます。

【木村】例えば遊休地に賃貸物件を建てることで、相続時の評価額を圧縮することができます。また賃貸併用住宅として、一部を賃貸にし、残りを二世帯住宅にした場合、敷地も一部は貸家建付地扱いになり、自宅部分には先ほどの同居の特例が使える。これまで二世帯住宅は内階段で行き来ができなければ同居扱いにならなかったのですが、これも本年1月から条件が緩和され、同じ建物なら同居と見なされる※2ようになりました。

──対策を考えるにあたって、最新情報は常に把握しておく必要がありますね。

【木村】税制は「猫の目税制」と呼ばれるほどよく変わりますし、国税不服審判所の裁決にも注意が必要です。例えば近年問題になっているのが、高齢者施設の入居一時金を夫が妻の代わりに払った場合。生活費と見て課税されないのか、相続財産として課税されるのかという議論があり、2010年と2011年では、状況等の違いから異なる裁決が出ています。

※1 原則介護施設に入る前に同居人がいて、その後、自宅を他人に貸していなければ適用可能。
※2 一棟の建物の考え方に変わった。ただし区分所有権で登記していないこと。